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ヘリオトロープ 青 ページ17

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 そしてトーナメント戦当日である――一年生たちもかなりの奮闘を見せていたが、しかし相手は強豪テニス部の先輩たち、おいそれと勝てるはずもなく。ほとんどの一年は、初戦、あるいは二回戦で敗北を期していた。こてんぱんである。ここで心が折れてしまうか、悔しさを向上心に変えられるかは、多分、人による。
 意気込んでいた真田は善戦したものの、二回戦で三年生相手に敗れた。悔しさから唇を噛むが、しかし自傷したところで結果は変わらない。変わるべきは自分だ、もっと強くならねば。真田は大きく息を吐いた。
 さて。熾烈な戦いを制し、見事上位四名に残ったのは、さすがの三年生がふたりと――まさかの、一年生がふたりだった。上級生を下しその座を勝ち取った一年の姿に、周囲にどよめきが走る。
 ひとりは、のちに“神の子”として名を馳せる、幸村精市。この頃から才能の塊であることをうかがわせる。すでに彼の強さは噂にはなっていて、周りには、『やっぱすげえんだな、あいつ』とでも表現したらいいか、そんな納得と関心の雰囲気が漂っている。
 ――問題なのは、もうひとりの一年生だった。金色に染められた短い髪、周りすべてを威嚇するような、攻撃的な空気を纏った少年。

「誰だ? あいつ」
「知らねえ」
「あれじゃねえの、C組のAA」
「Aってあいつかあ」

 ひそひそと交わされる会話を、Aはギッと鋭く睨みつける。ヒッ、と彼らは息を呑んで押し黙った。
 さすがに、と言うべきか、レギュラーのメンバーは強く、幸村とAは、三年のふたり共々、敗北を期することになる。先輩に向かってチッと盛大に舌打ちをかまし、周囲の反感をこれでもかと買った少年の背を、幸村はじっと見つめていた。


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角砂糖(プロフ) - 美琴さん» ありがとうございます!!(大声) (2020年3月11日 19時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
美琴 - 好きです(突然の告白) (2020年3月9日 20時) (レス) id: 0419c563a9 (このIDを非表示/違反報告)
角砂糖(プロフ) - 蘇芳さん» この作品を愛していただき本当にありがとうございます。この話の続編は、今の所はあまり考えていません。今非常に私生活が忙しく、それが一段落したら何か書きたいなとは思っていますので、いつになるかわかりませんが、もし気が向けばお付き合いいただけると幸いです。 (2020年1月30日 4時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
蘇芳(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました!もしもあるのなら続編楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2020年1月24日 20時) (レス) id: ec6c109e68 (このIDを非表示/違反報告)
ピット☆(プロフ) - 角砂糖さん» そうです!覚えていてもらえて嬉しいです!!予定があるかはわかりませんが次の作品をお待ちしてます! (2019年11月20日 1時) (レス) id: f631e9f6d4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:角砂糖 | 作成日時:2019年3月18日 21時

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