What's your name? ○ ページ12
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「ばーかじゃねェの?」
心底うんざりしたように、勘弁しろと言うように。大きな大きな、そして深いため息とともにAはうめく。
「もう一回言っていい? お前らマジでばァっかじゃねェの?」
彼のじっとりと恨みのこもった目線の先には、にこにこ笑う幸村と、いくらか気まずげな丸井がいる。
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ご存知の通り、テニスにはシングルスとダブルスが存在する。そのふたつでは戦い方も動きも大きく異なるので、それぞれ選手によって、得意不得意がわかれるのは当然と言えた。
ダブルスペアというのは、どいつもこいつも自分と相棒に多大な自信を持っている。まあ相方を信じること、その信頼が強さに直結する競技ではあるので、悪いことではない。
ことの発端は、ある時菊丸がなんとはなしに放ったこの言葉だった。
「――だからさ、俺たちのダブルスなら、手塚にも幸村にも、誰にも負けないと思うんだよにゃあ」
と、そんな自信に満ちた発言は、なにも今に始まったことではない。青学の黄金ペアとして、同調という能力的にも精神的にも心強い武器を手に戦う者として、あるいは元来の性格ゆえか――こういった自らを鼓舞するような言葉を口にすることが多かった。そしてそれに対して、例えば氷帝の宍戸・鳳ペアだとか、あるいは四天宝寺の一氏・金色ペアだとか――それぞれの学校の誇るダブルスペアが、反論にかかるのが常だったが、その時「聞き捨てならねえな」と声を上げたのは、立海の丸井ブン太だった。
「幸村くんがお前に負けるはずねえだろい」
反論するのはそこでいいのか?
ともあれそんな風に始まった舌戦をにこにこと見守っていた幸村が、あるタイミングでこう言い出したのである。
「そんなに言うなら一度やってみたらいいんじゃない?」
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そして冒頭に戻る。
「マジでさァ……お前俺をイジメんのそんなに好きなの」
「うん、好きだよ」
「最っ悪だろしんでくれ……」
「あ、そういう言い方するなよ。怒るぞ」
「現時点で怒ってるんだよなァー、俺が」
あ゛―、とAは天を仰ぐ。
「ひとりでやれよひとりで! 俺を巻き込むな!」
「ダブルスで試合しようって言ってんのに」
「ブン太責任取れそこで知らん顔すんな!」
「無理無理足引っ張るからぜってえ無理」
そう、要するには。
「いいから俺とダブルス組んでよ」
「ぜってェやだかんな!」
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What's your name? ●→←だって男子中学生だもの 蓋
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角砂糖(プロフ) - 美琴さん» ありがとうございます!!(大声) (2020年3月11日 19時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
美琴 - 好きです(突然の告白) (2020年3月9日 20時) (レス) id: 0419c563a9 (このIDを非表示/違反報告)
角砂糖(プロフ) - 蘇芳さん» この作品を愛していただき本当にありがとうございます。この話の続編は、今の所はあまり考えていません。今非常に私生活が忙しく、それが一段落したら何か書きたいなとは思っていますので、いつになるかわかりませんが、もし気が向けばお付き合いいただけると幸いです。 (2020年1月30日 4時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
蘇芳(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました!もしもあるのなら続編楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2020年1月24日 20時) (レス) id: ec6c109e68 (このIDを非表示/違反報告)
ピット☆(プロフ) - 角砂糖さん» そうです!覚えていてもらえて嬉しいです!!予定があるかはわかりませんが次の作品をお待ちしてます! (2019年11月20日 1時) (レス) id: f631e9f6d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:角砂糖 | 作成日時:2019年3月18日 21時