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「私も魔法を使えるようになったのは遅めだったから、焦らなくてもいいんじゃない?」

 お母さんが、お父さんに言い聞かせるように言う。くろは周りの子より魔法を使えるのが遅かった。この世界では、それは異端だった。くろと同年代の子はほとんどと言っていいほど、魔法が使える。だけど、くろは使えなかったからお父さんは、いやお父さんだけでなく、周りの子たちも私のことをいつも軽蔑するような目で見てきた。口癖は「早く使えるようになれよ」。それは、周りからの目を気にしているような発言で、くろの気持ちなんていっさい考えていないように見えた。

 いつもお母さんは味方でいてくれた。だから、くろはお母さんだけは好きだった。例えどんなに周りの子になんと言われようとも、お父さんに好かれていない子どもであろうと、くろはお母さんが味方になってくれるからがんばれた。それなのに、ある日を境にお母さんはお父さんの方に行った。8歳の誕生日を迎えた頃だっただろうか。さすがに遅すぎる、と言われた。まさか『無法者』なのではと言われたけど、くろにはよくわからなかった。ただ、それはお父さんとお母さんが嫌いなものだということはわかった。それから、2人はくろを蔑んだ。暴力、暴言は当たり前。毎日、体が痛いのに泣いてもやめてくれなかった。生きる価値が見つからない。

 ただ、それよりも、最近少し苦しい。息をしようとしても、胸のあたりが稀にチクリと痛む。だけど、我慢してても今度はじわりじわりと痛んでくる。毎日じゃないだけ、いいかもしれない。

 今日はお父さんのお姉さんが来た。久々にくろに会ったから、クマのぬいぐるみをくれた。くりっとした目がかわいらしい。この子は綺麗だった。くろと違って青い肌もなければ、赤く汚れているところもない。かわいい! 心からそう思った。名前はマホだった気がする。みんなと同じ、魔法が使いたかったから、そうつけたはず。あんまり覚えていないけれど。

 それからというものの、お父さんのお姉さんがよく家に来るようになった。季節が冬になり始めたとき、お父さんのお姉さんがくろの腕を掴んだ。その日はゆったりとした服を着ていたせいか、袖から腕が見えたみたいだった。お父さんとお母さんに告げ口することもなく、くろのことを「預からせてほしい」とだけ言い、くろを引き取った。

 最後に言ったお父さんの「どうせすぐ死ぬだろ」。忘れてない。

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円藤 マメ(プロフ) - 菜の葉さん» ありがとうございます:) 褒められて照れる。リンク記載の件把握しました、よろしくお願いします!。 (2019年7月19日 19時) (レス) id: 3241387696 (このIDを非表示/違反報告)
菜の葉(プロフ) - 文才がヤバいですッ! クロちゃんの想いとか感情とか、すごい伝わってきます…! こちらの作品を、『リンク集』のところに載せさせていただきますね! (2019年7月19日 18時) (レス) id: 8971b2ec5c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:円藤 マメ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年7月18日 22時

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