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大きな黒縁メガネをかけているのが特徴的な童顔な子。館で見たときは掃除機を持っていたはずなのに、今はない。仮に旅団メンバー全員が念能力を持っているのならば、彼女は具現化系になる。――厄介だな。そう思いながら彼女にも礼をした。
「今いるのはこの5人だけだ」
「……そう」
幻影旅団の構成人数は確か13人。現在は2分の1しかいないようだ。しかし、入る予定のない私からすれば誰がいるとか、どんな人がいるとかは正直どうだっていい。ただ目的を達成できれば、それで構わないのである。
私の返事を聞いたクロロは先程まで立っていた場所に向かって歩き出す。コートの背中の大きな逆十字架が目に入った。
「今日は解散だ、各自好きなようにしろ。明日の朝、またここに集まろう」
逆十字架に気を取られていたが、クロロの言葉で我に返る。今はルージュ・キッスを奪還することだけに集中しなければ。地面に視線を落とし、ぐっと拳を握りしめたと同時にぬっと目の前に黒い影が現れた。
「どうしたの？」
はっとして顔をあげると、不思議そうな表情でこちらを見るシズクが立っていた。辺りを見回すと既に他の人は廃墟から去っており、気が付けば私と彼女だけになっていた。
さっきまで敵だったのに、いきなり仲間に入れられた私の心配をするなんて、適応力があるのかはたまた従順であるのか。どちらにせよ、敵対意識が薄れていることは非常に有り難い。
「なんでもない、気にしないで」
「本当に？」
疑うような目で彼女は見てきた。抜けているように見えて勘が鋭い。ここにいても会話が繰り返されそうな気がしたため、彼女に背を向けて歩み始めた。
「あなたに話すほどのことじゃないから」
それだけ告げると、私は廃墟を後にした。
屋敷から歩いてきた道を戻って、ビルが立ち並ぶネオン街をふらふらとする。屋敷に戻るつもりはない。どこかで身を休めたいのだが、あいにく ここの土地のことは詳しくなく、ただアテもなく歩くだけだった。
蛍光色でライトアップされた電光掲示板がチカチカとする。こんな繫華街に泊まれるところなんてあるんだろうか。ぼんやりと考えながら歩いていると、どんっと肩に衝撃が走ったかと思うと私はバランスを崩した。
しかし、すんでのところで踏ん張り、倒れることは免れた。「すみません」と謝りながら顔をあげると、見覚えのある人物が不機嫌そうにこちらを睨んでいた。
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