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皮肉だ。屋敷にいたときに私が放ったことと同じことを、今言われている。『宝石は渡すから一緒に行動する』という条件を出したのがミスだったのか。いや絶対に違う。ただ、私が条件を出した時点で、
「ちょっと、考えさせて」
そう言った私は強張っている体をほぐそうと、一度ゆっくり瞼を閉じた。ロキシィお嬢様を最優先するべきだ。仮にもボディーガードとして雇われている身、当主やその娘を置いてまで宝石を取る必要はない。絶対にない。けれど、宝石を奪われる原因となったのは間違いなく私。このままぬけぬけと帰るわけにもいかない。
……やはり、入るしか選択肢はない。とはいっても私は彼らの仲間になる気などサラサラない。でも、私の念能力が認められているだけなら、必ずしも入団する必要はないんじゃないだろうか。
――考えがまとまった私は深呼吸をして、目の前に座っている団長を見据えた。
「いいわ、その条件呑んであげる」
私の答えを聞いた彼の仲間たちは、驚く人と顔をしかめる人の、大きく分けて二つの反応をとっていた。私の本意ではないから、顔をしかめた人は安心してほしいと思いつつ話を続ける。
「けど、旅団には入らない。能力を買っているだけなら、協力するだけで十分でしょう？」
団長という人物は「そうか」とだけ言うと立ち上がってこちらに歩み寄ってきた。なにかされるものだと思い、身構える。私の目の前で立ち止まった奴は、私に右手を差し出してきた。よくわからずに、彼の顔と差し出された顔を交互に見ていると、彼が話し出す。
「オレはクロロ=ルシルフルだ」
急に馴れ馴れしくなったな、と心の中で思いながら彼の手を握り返した。
「A=ダージリン。好きなように呼んでもらってかまわないわ」
私の名前を聞いた彼は、私から手を離した。冷血と言われる幻影旅団の団長の彼の手は、生ぬるかった。すぐに手は離れたけれど、人と握手したときの温度はなぜか長く残るものだ。手をぶらりと下げて、早く熱を忘れようと意識を別の方向に持っていく。
クロロの方を見ると、彼は携帯を持っていた青年の方を向いていた。
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