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予想通り。団長の言葉に驚く仲間たち。どうやら、団長を省いたメンバーは私の気配に気づいていなかったようだ。なぜ彼だけ。いや、それよりもこのままのこのこと出ていいのだろうか。まだ絶を使っているため逃げだすことはできる。しかし、それではロキシィお嬢様、そして当主に顔向けできなくなる。仕方ない。死ぬ覚悟をして、私は奴らが拠点している廃墟ビルの中に入る。
「気づいてたのね、性格の悪い人だわ」
「いや、実際にはお前には気づいていなかった。ただ、黒猫が教えてくれた」
「猫?」と聞き返す。どうやら、逃走中に彼は凝を使って黒猫の存在を確認していたらしい。それで、私がついてきていると判断したのだろう。そして、黒猫が廃墟ビルから去っていたのを見て、私が廃墟ビルまで追いついたのだとわかったみたいだ。他の人はそこまで気が回らなかったのか、黒猫には気づかなかったそう。どうりで、彼しか知らないわけだ。
「それで、ここまでついてきた理由は?」
「宝石を取り返しにきたから」
「え? 約束を破るの?」
不満げな声で、眼鏡をかけた女の子は私のことをじとーっとした目で見てきた。
「勘違いしないで。私はあなたたちに宝石あげる、だなんて一言も言ってないわ」
「うーん……たしかに、オレが覚えている限りじゃ『あげる』とは言われてないね」
携帯電話を持っている青年が言うと、約3人から睨まれて、謝っていた。団長と電話するときもあの特徴的な形状の携帯を使っていたから彼が常備しているものだと予想する。おそらく、離せない物なんだろう。
「なるほどな。だがオレたちもただで返すわけにはいかない」
「でしょうね」
「ただ、先程も言ったようにオレはお前の能力を見込んでいる。旅団に入らないか」
団長のその言葉にありえない、という視線を送る一部のメンバー。むろん私も送らせていただく。
いったい、なにをどうしたら、私を犯罪集団の輪の中にいれようと思うのか。ただ、能力を認めてくれていることに悪い気はしなかった。幻影旅団は恐れられている。そんな脅威的な集団のリーダーに認められるのはなかなかレアだと思う。私に入団を進めてさえいなければよかったのに。
「理解できないわね。私があなたたちの役に立てるとはとうてい思えないけれど」
「役に立つか立たないかは、今分かることじゃないだろう」
なかなかいいところをついてくる。
「もし入るのなら、宝石は返す。交換条件だ、簡単なことだろう?」
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