【第１章】 白縹のフラワークラウン ページ12
「あいつ、特質系だろうな」
幻影旅団のリーダーであろう、黒のコートの背中に十字架を背負っていた男が言う。なぜ私が特質系であると見抜けたのだろうか、実際に特質系である。
──これは強化系、変化系、放出系、具現化系、操作系の5つの念能力をほぼ全て使用できると言っていい属性である。とはいっても、使い勝手が広く、また他の念能力と比べ、ガタにはまりづらいのが欠点なので、強いかと言われればそうでもない。しかし、使用用途と能力さえ合えば最強と言えるだろう。
おそらく見抜けた理由は使用した黒猫の能力が原因だろう。あれは操作系、具現化系の能力を使用したうえで、さらに放出系も補っている。
この系統の念能力は六角形状で上から強化系、時計回りで変化系、具現化系、特質系、操作系、放出系と並んでいる。仮に強化系の念能力が"100%"出せる人間がいたとしたら、基本的に隣り合う系統……つまり、変化系と放出系は、補える能力となる。ただし、あくまでメインは強化系だ。いくら変化系を極めても、おそらくそれは"不完全"になるだろう。対になっている特質系は、ほとんど補えないと言ってもいい。
──私の話に戻る。つまり、具現化系の能力を使って放出系の能力を補うことも、放出系の能力を使って具現化系の能力を補うこともほぼ不可能なのである。操作系の可能性もあるが、対になっていないとはいえ操作系の能力とは離れており補うとしたらかなりの修行を積まなければ取得できない。簡単に三つの能力を扱えると考えるのならば、特質系が無難だろう。
「急にどうしたの？」
不思議そうに尋ねる爽やかな声は、きっと彼に電話していた男だろう。
「いや、少々気になってな」
「どういうこと？」
おそらく、眼鏡をかけていた女の子が聞き返した。
「今回、オレたちは狙っていた宝石を先に盗られた。最終的には手に入ったわけだが……。しかし、これはこれからも起きるかもしれない事態だろ？ そういうときに、あいつの能力は便利だと感じた」
真っ先に執着心がすごいと思った。先に盗まれたのなら諦めるべきでは？ というか盗まないで、というツッコミが山ほどでてくる。眉間のあたりを人差し指で抱えて聞こえない程度に溜息をつく。
「だから、勧誘しようと思ってな」
そこまで聞いた私は動きを止めた。もしかして、と、この先、彼が言うであろう発言を予測する。
きっとこういうに違いない。
「そこにいるんだろう？」
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