耳元で歌わせて（赤）

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リハ終えて

俺らは一旦店の休憩室に入る

後15分もしたらチケットのもぎりせんなんけど



｢はじめまして。安田章大ですぅ｣

｢渋やんと同じバンドのギターしてますぅ｣



懐っこいヤスが挨拶して



｢ドラムの大倉忠義です｣


｢ベースの丸山隆平です｣



って次々挨拶して

大倉とマルにいたっては握手までして

最後に



｢錦戸っす｣



って人見知り全開の亮も挨拶して



｢Aちゃん亮は人見知りで照れてるだけやから気にせんでええよ｣



天使ヤスのフォローも入って

Aちゃんもふんわり笑ってくれて終わりのはずが



｢なぁ何ですばるくんなん？｣

｢すばるくんて面倒臭いやん？｣



って大倉のアホが言うてきて


Aちゃん戸惑ってるやんけ

この2ヶ月近く俺がどんだけ頑張ってきた思てんねん



｢アホかっ...｣



｢A！｣


俺の声は裏口から入ってきたマスターの声にかき消された


弾かれたように振り返ったAちゃん



｢とむくん…｣



そう呟いたAちゃんの目には見る見る間に涙が溜まって

転がるように大倉や亮をかき分けてきたマスターに抱きしめられて



｢どんだけ…どんだけ心配したと思ってんねん｣


そう言われると

Aちゃんはマスターにすがって声をあげて泣き出した



｢どういうこと？｣



小さな声でまるが聞いてくるけど

わけわからんのは俺も一緒で

黙って首を振るしか出来へんかった



｢すばるくん時間…｣



立ちつくす俺に

亮が申し訳なさそうに言うてきた



｢あっうん｣



Aちゃんが気になるけど

近所にも迷惑かけるし

お客さんに中に入ってもらわんと

ライブ開始時間もあるし


後ろ髪引かれながらも受付けしに行く

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