耳元で歌わせて（赤）

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今年の溶けてしまいそうな暑さが過ぎて

長袖で過ごすんが当たり前になった今日

初めてAちゃんが俺のライブに来てくれる


ライブハウスと言うか

BARの一角にライブできるスペースがあって

ライブする時はBARのテーブルや椅子を隅に寄せてやるようなとこやけど

マスターがとってもええ人で

俺らのワンマンはいっつもここでやらせてもらってる


ゆっくり話せへんのも嫌やから

Aちゃんには早めの時間言うてて

音合わせしながらもドキドキして待ってる状態



｢なんか今日の渋やん変やない？｣

｢大丈夫？｣



って天使みたいなギターのヤスが声かけてくれる



｢うん、何もあらへん｣

｢大丈夫やで｣



って答えた時に入り口のドアが開いて

そ〜っとAちゃんが顔を出した

不安そうにキョロキョロ周りを見回して

俺の事見つけたら

ふわりと笑って手を小さく振ってくれた


俺がギター置いて入り口まで迎えに行ったら



｢他の人来てへんから間違うたかと思った｣



って今まで見たこともない

ロックTにマンパ着てスキニータイプのジーパン

足元はスニーカー

ボディバッグ

のライブ仕様のAちゃん



｢ごめん｣

｢時間言い間違えたんかも｣



そうとぼけて

カウンターまで連れて行く



｢１曲合わせたら終わりやし待っといて｣



そう言うてステージ戻る


わかりやすく


ニヤニヤニマニマしたメンバーと

目ぇ合わさんまんま



｢続きやんで｣



そう言うてギターを手に取った

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