雪解け /am ページ17
「ただいまー、」
玄関の方から聞きなれた声。開いたドアからふわっと外の冷気が流れ込んできて、少し身震いした。
『おかえり。』
「ただいま。超寒いよ、外」
『やだなぁ、暖房付けよっか』
「そうしよ、…リモコンどこだ」
上機嫌に鼻歌を歌いながら、リモコンを探す彼をキッチンから眺める。この同居生活を初めて、もう二年が経とうとしてた。
「今日の晩御飯なに〜？」
無事暖房を付けてこっちへ戻ってきた彼が、後ろから覆いかぶさるようにして私の手元を覗き込む。
『寒いしシチューですよ、旦那』
「旦那って、(笑)」
『いつかほんとの旦那になる日がくるかも知れないからさ、予行練習。』
「ふふ、用意周到だなぁ」
優しい声で笑った彼は、そっと私の肩に顎を乗せて甘えるようにゆらゆら揺れる。
『ちょっと、揺れたら危ないでしょ』
少し怒ると、むう、って拗ねたように頬を膨らませる。彼のこういうあざとい所までまるまる好きだ。
「ねえ？」
『ん？』
「凄い事言ってあげよっか、」
『凄いこと？』
「そう。多分Aびっくりするよ？」
『へぇ。』
思ったより私の食い付きが少なかったからか、彼は負けじと私のお腹を人差し指でつつく。
『ちょっと(笑)、分かったちゃんと聞く』
「よし。...えっとね、落ち着いて聞いてよ？」
彼は、落ちてきた私の服の袖をくるくると捲りながら、耳元でそっと囁いた。
「俺の、お嫁さんになってほしいの。」
コトン、と包丁がまな板の上に落ちて、後ろの彼が危ないよって慌ててる。私はすぐに言葉の意味を理解出来なくて、ただ加速する鼓動を抑えるのに必死だった。
『…本当？』
「うん、ほんと。」
『結婚、するの？』
「うん、するよ。」
『まぁくん、私の…旦那さんになるの？』
「うん、なるよ。」
くふふ、って彼が笑って私を正面に向かせた。甘い、蕩けるような瞳が私を捉えた。
『まぁくん、』
「ん、」
『好き』
「うん、」
『大好き』
「うん、」
『愛…』
「愛してるよ。」
ゴゴゴ、って大きく音を立ててやっと起動し出した暖房が、二人を暖かい空気で包み込んだ。
甘いなあ、って。溶けちゃいそうだなあ、って。
でも今なら溶けてもいいかなあ、って。
彼となら、溶けちゃいたいなあ、って。
そんな、とある冬の日のハナシ。
雪と一緒に、溶けちゃいたいってハナシ。
end.
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ウタ(プロフ) - 愛梨さん» ありがとうございます！とても嬉しいです。励みになります。これからもマイペースに頑張ります！ (2020年1月5日 18時) (
レス) id: 2132398f2b (このIDを非表示/違反報告)
愛梨 - はじめまして。どのお話もとーっても面白くて大好きです。更新大変だとは思いますが頑張ってください。応援してます。 (2020年1月5日 14時) (レス) id: f7e12740e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ウタ | 作成日時：2019年1月31日 21時
