微熱 /am ページ1
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「ずっと…ずっと前から好きだった！」
最近壊れかけのエアコンが部屋の隅でガタガタと音を鳴らし始めた。流石にあれはもう使えないな、なんて頭の片隅で思う。
「…嬉しい…、私も、私も好き！」
目の前で繰り広げられる嘘のように在り来りすぎる展開に、私の瞼はゆっくりと落ちてゆく。
時間潰しの為に適当に選んだ映画とは言っても、これでは外に出てカフェでも行くべきだったかと早々に後悔した。
『ねえ、面白く無くない？これ』
「ええ？そう？超面白いよ」
『…そっか』
雰囲気が大事だとか何だとか言い、コンビニで買ってきたポップコーンを頬張りながら彼は言う。
さっきから所々、壊れたエアコンの音で台詞が聞こえてない事も、きっと気にも止めていないんだろう。
「わ、ねぇ、これキスするって絶対」
「ああ！ほら！ねぇA！」
とうとう観ていられなくなり、手元の液晶画面を見つめていた私の肩を彼が左手で叩く。
こんな関係を二十年も続けてきた私達は、世間一般的に言うと幼馴染ってやつで。
まぁ言ってみれば腐れ縁みたいなもので。
そんな彼への想いを私は十二年間もひた隠しにしてきた訳で。
「…Aっ！」
『っ、何？』
「いや、珈琲飲む？って聞いたんだけど。」
「どしたの？熱でもある？」
ゆっくりと真っ直ぐ伸びてきた手が、私の前髪を流し熱い額に触れる。
そういう所。無駄に優しくする所。
計算なら良いものの、この場合は天然だからタチが悪い。
『…ない。大丈夫だから』
「ええ、でも熱いよ？寝ときな」
『いいよ、大丈夫』
「...もう、たまには俺を頼りなよ！」
少し不貞腐れたような顔が私の顔を覗き込んだ。
『...じゃあ、お言葉に甘えて』
「よし、…あ、体温計持ってくる。何処にある？」
『えっと、そこの棚の二番目の引き出し』
「ん、」
手渡された体温計で熱を測ると、37.6度と表示されていた。
『微熱…かな』
「俺コンビニ行ってくるよ。ゼリーでいい？」
微熱なのに大袈裟だなって、コートを羽織る後ろ姿を見ながら少し笑う。
別に行かなくていいのに、ってふと思った。そう。それだけだったのに。
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ウタ(プロフ) - 愛梨さん» ありがとうございます！とても嬉しいです。励みになります。これからもマイペースに頑張ります！ (2020年1月5日 18時) (
レス) id: 2132398f2b (このIDを非表示/違反報告)
愛梨 - はじめまして。どのお話もとーっても面白くて大好きです。更新大変だとは思いますが頑張ってください。応援してます。 (2020年1月5日 14時) (レス) id: f7e12740e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ウタ | 作成日時：2019年1月31日 21時
