*笑顔 ページ9
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Aちゃん?大丈夫?元気ある?
そう言いたくても上手く言えなくて。
「どうしたん?」
結局はこんなことしか言えない。
志乃里の激押しのおかげでここにいるのだかその話をしたら急に元気がなくなっているAちゃん。
なんだろうか。具合が悪くなったのかな。
でも下に俯いているとまつ毛がすごく綺麗に見えて。肩まで下ろされたチョコレートのような髪は誰よりも可愛く思えて。
顔は至って普通の女の子。俺たちが来た瞬間に固まる体は小柄なようだ。多分、どこにでもいる子。
ライブとかではペンライトを4つ持っていて全員の色を俺たちに照らしてくれていた。その姿が珍しかったのでいつの間にか顔まで覚えていたのだ。
気になって。興味があって。どんな子なんだろうか。単推しとかにならないのかな。
「坂田さん…」
震える声で俺の名前呼ばないで。悲しそうな顔はどうやら彼女には似合わなそうだ。
「具合悪なった?大丈夫?」
「あ、大丈夫です。ちょっと考え事していたので!ありがとうございます…」
考え事、か。
考え事しているような顔じゃなくて悩んでいる顔だったけれど。
「志乃里、Aちゃん紹介してくれてありがとうな」
「全然!!」
まーしーがそう言っていたので試しにAちゃんの方を見ると笑っているようだけれど全く口角というもの自体は上がっておらず、作り笑いということが目に見えた。
志乃里が呼び捨てされていること?
それが彼女の悩みの種じゃないかって不思議な勘だが思った。嫉妬、かもしれない。
志乃里は浦島坂田船のリスナーではない。だから志乃里よりAちゃんの方が俺たちのことをよく知っている。なのに志乃里の方が俺たちとの距離は近いから。
なら、
呼び捨てくらい許してくれるよね?
「A!」
試しているだけ。どんな反応してくれるのか見てみたかっただけ。ちょっと興味があっただけ。それだけだ。
「坂田、さんっ、?」
君の可愛い反応と少しだけ笑った顔は目に焼き付いてしばらく離れなさそう。
なんだろうか、変な感情。
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くりぬこ - お話とても楽しく読まさせて頂きました!!こんな事が現実になればどれほど嬉しいことか…まあないですけどね(笑)これからも更新楽しみにしています! (2019年3月28日 16時) (レス) id: 8b048cd6e4 (このIDを非表示/違反報告)
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