恐怖を押し殺して−�� ページ10
ヒドラジンをしまうと、スマホから何やら話し声が聞こえた。慌てて手に取れば、焦ったように電話口に話しかける安室の声が。
［遥斗さん、返事してくれ！］
「呼んだ！？」
［散々呼んだぞ！…大丈夫なのか？］
「すみません、催眠ガスと多分睡眠薬のせいで眠気が…流石の僕も睡魔が」
［頼むから寝ないでくれ］
「ウィナー、睡魔…」
［遥斗さん、寝るな！］
緊張感の無い僕に対して、安室から叱咤のお言葉が飛ぶ。が、眠いのは確かだ。だからこうして眠気を少しでも誤魔化そうとしている。
「あとどのくらいかかりそうですか？」
［…随分とまた遠くに攫われたようだからね。急いでも、あと十分は…」
「十分…」
短いような、長いような。でもそれまで彼らの助けを待っていれば、僕らは助かるハズ。
［君はとにかく隠れる事に専念してくれ。薬品の管理庫だったか。彼らにもそう言っておく］
「彼ら？」
［――赤井やコナンくんだよ］
彼らも来るのか。
「随分と豪勢なお助けだな。安心して眠っちまうぜ」
［本当に寝るなよ？］
「ウィンナー睡魔…」
［やかましい］
頼むから寝るな、と再度念押しをして僕らの辛抱を懇願する安室。
［予想はつくが…一体誰に誘拐された？］
「実行犯は知らない男だよ。…でも多分、雇い主は安室の考えている通りだと思う。アイツ以外で僕まで攫う理由が思いつかない」
僕について知っている悪者と言えば、アルマか、あるいはベルモットか。組織壊滅の際にベルモットがどうなったかは知らないが、少なくとも彼女は僕に固執するような女性ではない。
恐怖が心臓から伝播して、血管を通って全身に巡る。本人はいない筈なのに、脅威に対して本能はガンガンと警鐘を鳴らした。
無意識に、スマホを持つ手が震える。
「…こんな時に言うのもなんだけどさ、安室さん」
［…度の過ぎた冗談じゃなければ、構わない。君の性格については知っているつもりだからな］
「はは、ありがてーなぁ」
頼もしさに口角を上げた。
…上げないと、やっていられなかった。
「――――…たすけて」
肺の奥から空気を重く吐き出して、恐怖で萎縮して締まる喉から声を絞り出す。藁にもすがる思いで、スマホを握る手が強まる。
［――ああ、必ず助けるさ］
僕は指揮だがな、と奥歯を噛み締めた安室は今までで一番頼りになった。半ば絶望の心境へ片足を突っ込みかけていた僕の心に、希望の温度が染み渡る。
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想世(プロフ) - みそらーめんさん» コメントありがとうございます。元ネタはとあるボカロ曲ですね。応援もありがたいです、色々と落ち着いたら更新頑張りたいと思います。 (2023年1月22日 9時) (
レス) @page46 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
みそらーめん - 元ネタの元ネタが人間失格、、、！何となく分かるような、、、？この作品、大好きです。体には気をつけて更新頑張ってください。 (2023年1月22日 8時) (レス) @page47 id: c05dcaa337 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 早桃さん» コメントありがとうございます。気に入って頂けたのなら何よりです。これからも更新頑張らせて頂きます。 (2022年12月18日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - やばいめっちゃ好き、、、！面白すぎて一気に読んじゃいました！！独特な世界観が個人的にツボです笑 これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してますぅぅぅ！大好き！ (2022年12月18日 17時) (レス) id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - せいあさん» 再度コメントありがとうございます。自分でも驚きですが、名残惜しくも次作で本編完結となります。どうぞ最後まで楽しんで頂けると幸いです。 (2022年12月1日 21時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年12月1日 18時
