歯痒さの足止め ページ35
「遥斗さんッ！！」
体勢を立て直すと、大きく揺れた建物の事なんて気にせずに彼の元へ戻ろうとした。けれど、それは江戸川君に止められた。
「どいて、江戸川君ッ！彼が…遥斗さんがあっちの方にいるの！」
「今行くのはやめとけ！…分かるだろ、さっきの爆発で有毒なガスがフロアに漂ってる」
「あの人が爆発に巻き込まれたのかもしれないのよ！！」
彼の言う通りだった。爆発から少し経った頃、辺りには色々な薬品が混じり合ったような刺激臭が漂い始めていた。ここにいるのは危険である事は、承知していた。
「灰原ッ！！」
「っ…」
「お前が行くより、赤井さん達に任せた方が良い。…オレ達じゃ、足手まといになるだけだ」
江戸川君はそう悔しそうに歯を食いしばった。確かに子どもの身体では大人より致死量は少ない。私が無謀に首を突っ込んだ所で、何も出来ずに最悪命を落とすだけ。
指を咥えて見ているだけというのは、嫌だった。けれど冷静な判断を下す彼を説得出来る程の言葉は、何も見つからなかった。
「………、分かった」
悲観が私を突き動かそうとした。それでも、全て丸めて引っ込めて頷いた。促されるがままに一旦外に避難する事になった。
外は騒然となっていた。周りには応援で来た警察官達やパトカーで溢れていたが、それ以上に野次馬が蔓延っていた。あれ程の爆発だ。心配や不安、中には好奇心を抱いて見に来ている人達もいるだろう。
保護という扱いで後から来た救急車に乗った。遥斗さんから、私が眠らされていた事を聞いていたのだろう。手配された救急車では、特に意識について聞かれた。
確かに睡魔は私を蝕んでいた。けれどそれ以上に、気がかりや心配が私の意識で幅を利かせて、睡魔に呑まれる事は無かった。
(お願い…)
この胸中に渦巻く不安が杞憂でありますように。お願いだから、嫌な予感が当たっていませんように。
奇跡にすがらないと、彼の元へ駆け出してしまいそうだった。
病院で検査を受けた私に、薬による後遺症や大怪我は無かった。後で事情聴取を受ける事にはなるだろうけど、今は遥斗さんの安否が気になって仕方がなかった。
江戸川君は現場に残ったけれど、内心ではきっと穏やかじゃなかった。
数時間後に、安室さんの部下と名乗る男が私の前に現れた。目つきが悪く背の高い眼鏡をかけた男は、憐れむように私を見ては目を伏せた。
「…残念だが」
哀愁の漂うその姿に、希望は見出せなかった。
「倉間遥斗は、恐らく――」
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想世(プロフ) - みそらーめんさん» コメントありがとうございます。元ネタはとあるボカロ曲ですね。応援もありがたいです、色々と落ち着いたら更新頑張りたいと思います。 (2023年1月22日 9時) (
レス) @page46 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
みそらーめん - 元ネタの元ネタが人間失格、、、！何となく分かるような、、、？この作品、大好きです。体には気をつけて更新頑張ってください。 (2023年1月22日 8時) (レス) @page47 id: c05dcaa337 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 早桃さん» コメントありがとうございます。気に入って頂けたのなら何よりです。これからも更新頑張らせて頂きます。 (2022年12月18日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - やばいめっちゃ好き、、、！面白すぎて一気に読んじゃいました！！独特な世界観が個人的にツボです笑 これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してますぅぅぅ！大好き！ (2022年12月18日 17時) (レス) id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - せいあさん» 再度コメントありがとうございます。自分でも驚きですが、名残惜しくも次作で本編完結となります。どうぞ最後まで楽しんで頂けると幸いです。 (2022年12月1日 21時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年12月1日 18時
