偽造されたレゾンデートル−�� ページ33
「もしも周りが敵だらけでいたら、そりゃ数少ない異性の味方なんて好きになるに決まってるでしょ？あんなに甘い言葉をかけたら、君だって好きになる。"こんなに上手くいくだなんて！"って思ってた。だってちょっとある事ない事をバカな奴らに吹き込むだけで、こんな小さな田舎じゃ君は簡単に村八分に遭っちゃうんだもん！」
「な、に…言ってるんだよ、愛」
「ねぇ、ハル」
彼女と相思相愛であった事に、素直に喜ぶ事は出来なかった。それはそうだろう、僕の不幸の原因が、僕の幸福の理由であると捉えていた彼女自身にあったとなれば。
彼女は実は遭難の恐怖に苛まれ、正気を失っている。そう思って――否、思い込んだ僕は彼女の肩を強く揺さぶった。元の天真爛漫な彼女に戻って欲しいと切に願い、愛の顔を覗き込んだ。
その表情は、彼女らしからぬ狂気と恍惚にまみれていた。視線になど疎かった当時の僕ですら、彼女の異常性をそこでようやく察知し、掴んだ彼女の肩から手を離そうとした。
が、他ならぬ彼女自身にそれを止められる。僕は手首を強く掴まれ、僕を逃さまいと愛は嗤った。
「私は深く傷付いたんだよ…？君が"上京したい"だなんて言い出すから…」
「…！」
「一生ずっと、ここで骨を埋めるまで一緒に暮らすと思ってた。私と君は結婚して、永遠にここにいられると思った。私も君も、それを望んでいたハズだよ？」
「――こんな所に一生いるだなんて、息が詰まっちまう！」
彼女に騙され続けていた。それにショックを受けながらも、僕は言い返した。
いや、現実逃避や説得も兼ねていたのかもしれない。これは何かの間違いなのであると、そして僕の意思が正しく彼女に伝わっていないと思って、叫んだ。
「差別や偏見が横行するこんな田舎じゃ、僕は息が詰まりそうだ…！都会に行けば、少なくともそんな物はここよりはマシだ！それに愛、お前だって東京に行けば良いだけの話だろ！？」
「東京に行ったら、目移りしてしまうかもしれないでしょ。私への依存なんて段々と、蚕が吐き出したばかりの糸のようにほつれて、解消されてしまう。それじゃあ困るの。何の為に今まで私が手を回したと思ってるの？」
「――ッ！」
「だからね、良い事を思いついたんだぁ」
僕の手を掴む彼女の力が強まる。嫌な予感が、警鐘が、頭の中でガンガン響いた。だというのに、僕は彼女の拘束から逃げられなかった。
往生際の悪い惚れた弱みが、僕の命取りとなった。
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想世(プロフ) - みそらーめんさん» コメントありがとうございます。元ネタはとあるボカロ曲ですね。応援もありがたいです、色々と落ち着いたら更新頑張りたいと思います。 (2023年1月22日 9時) (
レス) @page46 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
みそらーめん - 元ネタの元ネタが人間失格、、、！何となく分かるような、、、？この作品、大好きです。体には気をつけて更新頑張ってください。 (2023年1月22日 8時) (レス) @page47 id: c05dcaa337 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 早桃さん» コメントありがとうございます。気に入って頂けたのなら何よりです。これからも更新頑張らせて頂きます。 (2022年12月18日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - やばいめっちゃ好き、、、！面白すぎて一気に読んじゃいました！！独特な世界観が個人的にツボです笑 これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してますぅぅぅ！大好き！ (2022年12月18日 17時) (レス) id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - せいあさん» 再度コメントありがとうございます。自分でも驚きですが、名残惜しくも次作で本編完結となります。どうぞ最後まで楽しんで頂けると幸いです。 (2022年12月1日 21時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年12月1日 18時
