Crow is over. ページ29
「ヒドラジン…無色で空気に触れると煙を発する液体、だったよな」
「…ああ。そして吸う、もしくは触れると腐食する。中毒症状をもたらす場合も――」
「んで、硝酸アンモニウム水溶液と合わせると、アストロライトっつー液体爆弾になる」
目の前の男から借り受けた知識を、盗人猛々しく披露する。するとヤツは、僕が初めて見る驚いた表情で後ろを振り返った。
「…まさか」
「"射撃のセンスがある訳でも無い"っつー言葉、訂正しろよ。僕、こう見えて射撃の腕には自信があるんだぜ。…仮想世界の、だけど」
「あと――運には恵まれてたみたいだ」
アルマは僕が撃った跡を見た。
さっきの二発、何もアルマめがけて撃ったんじゃない。それじゃ当たらないと思ったから、バレないように僕のバッグ目掛けて撃った。一般人(？)の蘭ちゃんだって、至近距離で銃を避けられたし、現にさっきアルマに射線を見切られて避けられた。二の舞になってもおかしくない。
アルマは僕がヒドラジンと硝酸アンモニウム水溶液をくすねたことを知らなかった。
さっきバッグを投げた時にガラス瓶が割れるかと思ったが、実際には割れなかった。だから撃って割る必要があった。上手くヒドラジンと硝酸アンモニウム水溶液の入った瓶を割る事が出来たのなら、二つは触れ合うことで小規模の爆発を起こせる。プラーミャが使う液体爆弾程では無いが、あれのように。
「………、君は、諦めたんじゃなかったのか」
僕の意図に気付いたアルマは、白煙の生じる鞄の方へ向き合いながら呟いた。
「諦めたぜ？"僕が無事に助かる道"はな」
「…！」
「僕を人質にして灰原ちゃんをいいように扱おうだなんて、させねーよ。それに、悔しいだろ。このままお前にやられっぱなしだなんて」
「そんなのを許せる僕だとでも？」
「ざまぁみろッ！」
勝ち気になって僕は笑って、少しでも逃がさないように無様にアルマの足にしがみついた。対するアルマは、僕の拘束はいとも容易く振り解けるだろうに、瞬きを繰り返して面白いくらいにうろたえた。けれど結局はふ、と笑みをこぼした。徐々にその瞳には、見知った気持ちの悪い熱が復活する。
その笑みは、歪ながらも温かかった。それにすら嫌厭を覚えたが、どうせこの男はこれでもう逃げられまい。
あっさりと、あっけらかんと、僕らの決着として世界は閃光と共に急激に白く爆ぜた。
そして僕の白く染まった意識が戻ることは、二度と無かった。
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想世(プロフ) - みそらーめんさん» コメントありがとうございます。元ネタはとあるボカロ曲ですね。応援もありがたいです、色々と落ち着いたら更新頑張りたいと思います。 (2023年1月22日 9時) (
レス) @page46 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
みそらーめん - 元ネタの元ネタが人間失格、、、！何となく分かるような、、、？この作品、大好きです。体には気をつけて更新頑張ってください。 (2023年1月22日 8時) (レス) @page47 id: c05dcaa337 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 早桃さん» コメントありがとうございます。気に入って頂けたのなら何よりです。これからも更新頑張らせて頂きます。 (2022年12月18日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - やばいめっちゃ好き、、、！面白すぎて一気に読んじゃいました！！独特な世界観が個人的にツボです笑 これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してますぅぅぅ！大好き！ (2022年12月18日 17時) (レス) id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - せいあさん» 再度コメントありがとうございます。自分でも驚きですが、名残惜しくも次作で本編完結となります。どうぞ最後まで楽しんで頂けると幸いです。 (2022年12月1日 21時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年12月1日 18時
