嘘４３つめ。 ページ46
*
虚の言ったことに一瞬だけ自身の心臓が一度大きく脈を打った。
言葉の意味は理解していた。指で示した窓際に行きたいんだろうと。
そう分かっていても、少し。
ほんの少しだけ思考回路が停止しようとして背中に誰かの腕が強めに当たったことで我に返る。
「分かった。危ないから俺が先に窓の方へ進む。虚は俺の背中の方に回って、もう一回流されないようにどこでもいいから掴んでくれ」
「何から何までごめんなさい、ありがとうございます」
自分の腕から女特有の柔らかさと虚の温もりが消えたと思えば、右手にそれが移った。
後ろの見える範囲で彼女を見れば、いつもの笑顔で頭を少しだけ傾げている。
確かに、どこでもいいから掴んでくれとは言ったが。
…まさか手を繋がれるとは思っていなかった。
俺は動揺を悟られぬよう正面を向いて虚の左手を優しく引き「……行くぞ」という言葉を合図に歩き出す。
少々進みにくかったものの、窓際までは意外とすんなり着いた。
彼女はもう一度、俺にお礼を告げ、もう外の様子を検視している。
「あれは、今日学校の前にいた……」
「……マスコミか」
虚の見ている方向に俺も目を向けてみれば何か…多分、雄英の講師達に報道陣が詰め寄る様子がそこにあった。
ふと、虚の視線が別の所に動く。
その方向にも何かあるのかと視線をやろうとした瞬間。
「皆さん…大丈ー夫!!」
食堂に聞き覚えのある声が反響して、必然的に文字通り皆の視線が出口の上にある標識…に乗っかっている飯田に集まった。
……マジで非常口の標識みたいな恰好してんな、飯田。
「ただのマスコミです！なにもパニックになることはありません。大丈ー夫！！ここは雄英！！最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう！！」
飯田の一声にパニックになっていた人達はどうやら冷静さを取り戻したらしい。
その後の対応は流石最高峰といったところだ。
数人が倒れた人や転げた人を数人掛かりで起こし、保健室へ運んでいるのが目に留まる。
それと同時に右手の感触がするりとあっけなく離れるのを感じた。
「ショウくん、私達も教室に戻りましょう」
「…そうだな」
歩き出す虚の背中から自分の右手に視線を落とす。
右手の温かさが後を引いて、酷く物寂しさを覚えた。
ああ、そういえば。
──最後の一瞬、虚は何を見ていたのだろう。
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はむ(プロフ) - 言葉選びが好きです、 (2021年8月26日 0時) (
レス) id: 9bb4746f4d (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - 莉兎さん» 私の小説で楽しんでいただけて何よりです〜！！更新遅いですがコツコツ頑張っていくのでよろしくお願いします(｀・ω・´) (2018年7月22日 3時) (レス) id: 1bdc6616c8 (このIDを非表示/違反報告)
莉兎 - 凄い続き気になります、、、！めっちゃ楽しい(((o(*ﾟ∀ﾟ*)o)))、、！ (2018年7月10日 22時) (レス) id: 8e6cda3aa7 (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - 血華さん» わーっ！これからもドキドキできるような小説を書けるように精進します！応援、ありがとうございます〜！ (2018年4月4日 5時) (レス) id: 1bdc6616c8 (このIDを非表示/違反報告)
血華 - 凄く面白かったです！読んでいてドキドキしました！これからも応援してます！ (2018年3月31日 1時) (レス) id: d91252218e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雨 | 作成日時：2016年8月17日 9時
