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両耳たぶを掴まれる感覚に俯いていた顔を上げると、野薔薇がAの耳たぶを掴んでムッとした顔で立っていた。
「アンタが死にそうになってどうすんのって言ってんの」
『…のばら、』
「情けない声ね!ムカつくくらいふわふわした見た目のくせに声は凛々しいのがAの良いとこなんだから、シャッキリしなさいよ」
『…ッ』
野薔薇の強気な顔を見上げて、ゴシゴシと涙を拭う。
『…野薔薇かっこいい、素敵。姉御。まじ野薔薇』
「ふふん、もっと言っていいのよ」
『虎杖よりイケメン』
「あれ、俺巻き込まれた」
鼻水を啜りながら言うと虎杖が背中をさすってくれて、やっぱこっちもイケメンだった。
「とにかく、伏黒に確認しなきゃ始まんねーだろ。A、釘崎、伏黒のとこ行くぞ」
野薔薇が頷いて、虎杖に手を引かれていった先にはスマホを握ったまま険しい顔をした伏黒。
でもA達がきた来たことに気づくと、あっという間にいつもの表情に戻った。
「何で伊地知さんと話してんの…?」
「津美紀の姉ちゃん無事だったか…?Aが、"津美紀ちゃんが死んじゃう"って──」
「…問題ない。それより任務の危険度が吊り上がった。この件は他の術式に引き継がれる。オマエらはもう帰れ──Aもだ」
スマホをポケットにしまった伏黒は虎杖と野薔薇を補助監督の車まで引っ張った。
野薔薇を押し込んで、虎杖も少々乱暴に押し込んだ後、Aを見て一瞬押し黙る。
『恵、嘘なんでしょ…?問題ないって、』
「…嘘じゃない。頼む、虎杖達と戻ってくれ」
『戻ってどうすればいいの?…私は、津美紀ちゃんのところに行って守ればいい?』
「いや、津美紀は大丈夫だ。全部俺が何とかする。終わったら連絡するから──」
『恵は残るのに私は帰るの?できる訳ないよそんなの』
「残るっつっても少しだ。俺もすぐ戻る」
そこまで言うと、まだ何か言いたげなAを車の中に押し込んだ。
「"オマエら"って、伏黒は?」
「俺は武田さんに挨拶して帰る。ほら行け!!」
車窓から顔を出した虎杖にそう答えて、伏黒はすぐに踵を返した。
車内から見つめてくるAの目を見ないようにして、歪んだ自分の顔を、彼女に見せないようにして。
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Uo(プロフ) - 無さん» コメントありがとうございます❕イラストを載せるのは緊張するので、そう言っていただけると嬉しいです😖 (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
無 - 絵うっっま!!!お話の方もサクサク行かせてもらってます! (2022年12月27日 15時) (レス) @page36 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 鈴さん» こちらのミスです、すみません😖修正したので、見られるようになったと思います…! (2022年12月20日 15時) (レス) id: 37eb27a647 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - すみません、夢主ちゃんの画像が見れないのですが…… (2022年12月5日 18時) (レス) @page9 id: e67e995d1b (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - アオちゃんさん» コメントありがとうございます❕そんなにお褒めの言葉を頂けるなんて、感激です…!!😖ご期待に応えられるよう頑張ります! (2022年10月3日 23時) (レス) id: 6bc61cb134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま | 作成日時:2022年9月13日 1時