18話 ページ20
「あっ、あの……ちょっと待ってハグリッド!」
ハグリッドが振り返る。
ハリーを見下ろす目は、もじゃもじゃの黒い毛がかかっていても優しく見えた。
「どうしたハリー」
「……僕ここで会いたい子がいるんだ。ちょっと前に近くの公園で一度会ったきりだけど、その子、"またね"って僕に言ったんだ」
ハリーは俯いて声を絞り出した。
"ここに居たいなら"
この家に居たいなんてまったく思わない。
だけど、ハリーにはどうしても捨てきれないことがあったのだ。
「わからないけど、僕がここに戻れないこと伝えないと...彼女、もしかしたら僕を探すかも.....だから──」
そう、捨てられないことはただ一つだけ。Aだ。
彼女の"またね"という言葉を完全に信じてる訳ではない。
そんな言葉で、遠いところから抜け出してきたというあの子と簡単にまた会えるなんて思っていない。
それでもあの時彼女が「さようなら」ではなく「またね」の言葉を選んでくれたことが、本当に嬉しかったから。
ここで彼女を待たずに、自分でもどこかわからないような場所に行ってしまうことはできないと思った。きっと"友達"はそういうものだ。
「なんだハリー、ガールフレンドか!」
「ち、ちがうよ!友達さ」
ニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべるハグリッドに、ハリーは精一杯抵抗した。
「そりゃなんて子だ？ハリー」
まだニヤニヤ顔が抑えられていないハグリッドに聞かれて、ハリーが口を尖らせた。
言ったって分からないだろう。
「...Aだよ、A・シャフィック」
しかしハグリッドは、Aの名前に目を見開いて驚いたような顔をした。
「"シャフィック"だと？」
「そうだよ。どうかしたの？」
「その子は──……なんだ、白いだろ？」
「そう天使みたいにね。どうして分かるの？」
ハリーの質問には答えず、ハグリッドはチリチリの焦げ茶色の髭を撫でながらハリーをどこか楽しげに見ていた。
「安心しろハリー。その女の子とはこれから絶対会えるからよ。良かったな、よし行くぞ」
ハリーにはさっぱり理解できなくてやきもきしたが、これ以上何を聞いても答えてくれそうにない。
ハグリッドの広すぎる背中をジトリと見て、ハリーは渋々諦めた。
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
