【ハリーポッター】魔女が紡ぐ (ページ19)

今日:1 hit、昨日:136 hit、合計:656,899 hit

17話ページ19

「ハリーは行かせん!!」

未だに強気なバーノンの態度に、ほほうとハグリッドが嘲るように笑う。

「お前のようなコチコチのマグルに引き止められるもんなら、拝見しようじゃないか」

「マグ──何て言ったの？」

「マグルだ。連中のような魔法族ではない者をわしらはそう呼ぶ。よりによって、俺の見た中でも最悪のマグルの家で育てられるなんて、お前さんも不運だったなあ」

不憫なものを見る目を向けられて、ハリーが肩を竦ませる。

ダーズリー達が"マグル"？それで僕は"魔法使い"？そんなのは絵本の中だけの話だと思ってた。確かに爬虫類館のガラスは消えたけど、傘で火をつけたことなんかないし。

「この子の入学は生まれた時から決まっとる。世界一の魔法魔術学校ホグワーツで学ぶんだ。それも!歴代校長の中で最も偉大な魔法使い、ダンブルドアの元でな」

「そんなイカれたじじいに魔法を教わるのに、金なんか払わんぞ!!」

「貴様、俺の前でアルバス・ダンブルドアを侮辱すると……許さんぞ」

ハグリッドが今までで一番の怒りを含んだ目線と共に手に持っていた傘の先をバーノンに向けた。

その視線の端に、ハグリッドがハリーに焼いたケーキを食べるダドリーが映ると、ハグリッドは傘をひと振りしてダドリーのお尻に豚の尻尾を生やしてみせた。

一家は大騒ぎだが、ハリーは楽しかった。

長年豚みたいだと思っていたダドリーがついに本当に豚になってしまったんだから、もう面白くて仕方がない。

しかし、この雰囲気の中平然とケーキを食べるダドリーの図太さにはもはや拍手すら贈りたいところだ。

「ホグワーツの連中には今の……内緒にしてくれんか、ほんとは魔法を使っちゃならんのだ」

豚になったダドリーにてんやわんやのバーノン達を横目に、ハグリッドが大きな体を屈めてバツが悪そうにコソコソと言った。

巨体のせいで腰を屈めても大して小さくなれていないけど、申し訳なさそうなその姿はなぜか少し可愛いとすら思える。

同じようにハリーも少し声を顰めた。

「わかった」

「ちょいと遅れ気味だ。じゃ、行こうか」

どこに、とかどうやって、とかそういうことは何一つ言わずにハグリッドが言いながら傘をしまった。

まだダドリーに生えた尻尾で大慌てのダーズリー家などには見向きもせずに、そして直してやる素振りも一切見せずにハグリッドが振り返った。

「ここに居たいなら、別だがな」

そんな訳がないだろう？と言いたげなその目線に、ハリーは歯切れの悪い返事を溢した。