14話 ページ16
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バーノンは車を走らせていた。
もはやペチュニアも、あんなに怖いもの知らずだったダドリーでさえ口を出せなくなっていた。車内の雰囲気は最悪だ。
しばらく車を走らせて、辺りがすっかり暗くなるとバーノンは車を停めた。
「ここまでは追って来れんだろう」
満足そうに言って見上げた建物はあまりにもオンボロな一戸建てだ。
後ろには、強い風に煽られて荒れる海。
重いドアを開けるとギィという音と共に降ってくる埃をはらいながら中に入る。
当然ソファやベッドなどという上等な寝床が与えられるわけがないハリーは床の1番柔らかそうな所に寝床をこしらえ、ボロボロの毛布にくるまった。
空腹でお腹が鳴って、ダドリーの大きないびきが響いて、外ではゴロゴロと雷が鳴っている。
それから隙間だらけの壁から吹き抜ける隙間風のせいで、ハリーは眠れなかった。
最悪の夜だ。よりにもよって、今日。
ソファからはみ出したダドリーの太った手首に付いている腕時計は、23時50分をさしている。
あと10分。
あと10分で、ハリーの11歳の誕生日だ。
まさか、自分の誕生日をこんな埃だらけの場所で過ごすことになろうとは。
今までだって誕生日だからって何か特別なことが起こった訳ではないし、あの物置もかなり埃だらけだけれど。
結局手紙は読めないし……Aだったらどうしよう。
「(……きっと返事も出さない僕のことなんか、嫌いになる)」
外で、何かが軋む音が聞こえる。
屋根が落ちてきませんように。いや、いっそ落ちてきた方が暖かいかもしれない。
ハリーは砂まみれの床にバースデーケーキを描いて「HAPPY BIRTHDAY」という文字を添えた。
この言葉をハリーに言ってくれる人は、もはや自分自身だけなのだ。
「(あと10秒...)」
5…4…3…2………1──。
その瞬間、ドーン!と大きな衝撃音と共に扉が倒れた。
その向こうに、大きな男が立っていた。
突然の襲撃に、寝起きの目を見開いたダーズリー達の絶叫が響く。
「すまんかったなぁ」
ドアを壊して、ということだろう。こっちからするとちょっとだけ的外れな謝罪をした大男は、平然と重たいドアを元の場所に戻した。
「今すぐここから出ていけ!!家宅侵入罪だぞ!!!」
「黙れダーズリー。お前はすっこんでおれ!!」
当然のようにダーズリーの名前を知っていた大男が、バーノンが持っていた銃を片手でぐにゃりと上に曲げながら言った。
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
