10話 ページ12
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「僕、蛇と話すのって初めてだよ。君は……あの、よく人と話すの？」
蛇が起き上がって、首を左右に振る。
「ミャンマーから来たの？いいところ？家族が恋しい？」
人生初めての経験で興奮気味に聞くハリーに、蛇は掲示板を指すように見た。
ハリーもつられて掲示板に視線を移す。
【動物園育ち】
「……そっか」
この蛇には恋しい家族もいなければ、故郷がどんな場所なのかも分からない。
僕と一緒だ。
「僕もね、親の顔を知らないんだ」
知っているのは、僕のことが大嫌いな叔父と叔母くらい。
ハリーが蛇と友情を築いているところに、聞き慣れた声が「ママ!」と叫びハリーの声を遮った。
向かってきた巨体はダドリーだ。嫌な予感がじわりと背中を伝った。
「ママ!はやく!この蛇信じられないことやってる!!どけよ、オイ!!」
ドン!と突き飛ばされたハリーが、いとも簡単に横に転がされてしまう。
こういう時、ハリーは小柄で細くて、なんかいろいろ不利だと思う。
もしもハリーとダドリーが腕相撲をしたら、間違いなくハリーは瞬殺されるだろう。……別に羨ましくなんかないけど。
ハリーが密かにダドリーを睨むと突如、蛇のガラスケースが無くなった。
それはもう一瞬にして。まるで、魔法みたいに。
ハリーは起き上がって、息を呑んだ。
ガラスケースに全体重をかけていたダドリーはボチャン!と大きな音を立てて池に落ちる。その代わりのように、蛇がスルスルとケースを抜け出して外に這い出した。
館内の客たちが叫び声を上げて出口にかけ出す中、蛇がダドリーを通り過ぎてハリーの前に来る。
「ありがとよ」
「よかったね」
ハリーは咄嗟に返した。
逃げ出そうとは思わなかった。多分、この蛇が悪い奴じゃないって分かっていたからだ。
去っていく蛇から目を離してガラスケースを見ると、ずぶ濡れのダドリーがなぜかガラスケースに閉じ込められていた。
さっき消えたはずのガラスが今は元通りにダドリーを閉じ込めていたのだ。
「ママ!!ママ!!助けて!!ここから出してよ!!!」
ガラスケースの中のダドリーを見たペチュニアが絶叫するのが愉快で、ハリーは少し笑ってしまった。
しまった、油断していた。
ギロリという視線が空気を刺すようにハリーに向かってきたのが分かった。
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
