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(安室視点)
バーで起こった殺人事件を解決し、毛利小五郎や篠崎Aに一言挨拶をしてから立ち去ろうとした俺は、はたと気づく。
篠崎さんと彼女の婚約者を名乗る男の姿が見えないのだ。
少々疑問に思って周囲を見渡すと、二つあるエレベーターのうちのひとつの扉が、静かに閉じていくのを発見する。
どうやら二人はあれに乗ったらしい。
それを見届けた俺は毛利小五郎とコナンくんのもとへと向かった。
「毛利探偵、今日はお疲れ様でした。」
「全くだ!俺は別のバーに行って飲み直す!お前、飲んでねえならこの小僧を事務所に送ってけ。」
「え、しかし…」
毛利小五郎の言葉に頷きかねてベルモットの方をちらりと見る。
ベルモットは携帯から目を離し俺を一瞥すると、すぐに視線を外しエレベーターに乗り込んだ。
好きにしろということらしい。
「分かりました。じゃあ行こうかコナンくん。」
「うん。」
・
車に乗り込み走らせ始めて数分。
助手席に座っていたコナンくんが「ねえ…」と口を開く。
「Xデーまで、残り二十分くらいだよね。」
「ああ…それがどうかしたかい?」
顔をわずかにうつむかせて考え込んでいる様子のコナンくん。
この子はまた、そのよく回る頭で何かに気づいたのだろうか。
「残り二十分で組織の秘密が明るみに出る…それなのに、ベルモットは随分落ち着いてた。」
「…そうだね。でもそこはポーカーフェイスだったんじゃないか?内心はすごく焦っていたとか。」
「それならきっと時間をこまめに確認しちゃうと思わない?僕はベルモットの動向を気にして何回も奴を確認してたけど、ベルモットは時計は一度も見なかったし、携帯だって開いたのは全体を通して二回だけ…」
本当、よく見てるんだな。
俺は隠れて感心しつつコナンくんの言葉を反芻する。
Xデーが目前に迫っているにも関わらず、時間が気にならないうえに焦燥の顔色ひとつ見せない理由。
「……まさか。」
とある可能性に至った俺は、車通りの少ない道を走行していた愛車を急停止させた。
コナンくんは冷や汗を浮かべた真剣な表情でこくりと頷く。
「もしかしたらだけど…時間も携帯も気にする必要がないのは、標的がPCを開けない状況にあるのをその目でしっかり確認できていたから。つまり……」
「バーで、本物のメルローを発見したからか!」
俺は車を急発進させ、今来た道を戻るべくハンドルを切った。
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作者名:しま | 作成日時:2018年5月8日 23時