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果たして、二人は私の期待通りの驚愕っぷりを見せてくれた。
私が彼女たちに語ったのは次の三点。
ひとつ、篠崎Aと佐藤千佳子は同一人物であること。
ふたつ、私がイギリスの情報機関のエージェントだったこと。
みっつ、その仕事の一環で様々な人間を演じていたこと。
「じゃあ安室さんと付き合ってた頃のAさんって演技だったんですか!?」
「ま、まるで別人ですけど…」
私はその辺の事情は曖昧に笑って誤魔化した。
向こうには胡乱な目で私を見つめるコナンくんの姿がある。
よせ、そんな目をするな。
実際、そこのところは自分でもよく分かっていないのだ。
MI6の諜報員だった私がどうしてあのワガママ篠崎お嬢様に変貌を遂げたのか。
百歩譲ってあれが本当に演技だったとしても、安室さんとの交際を迫った理由が分からない。
付き合い出した後も特に彼の情報を探ったような事実はないし。
交際開始の時点で私は安室さん=バーボンであることは知っていたはずだし、普通は接触など避けるものではないのだろうか…?
あの父でさえ、私と安室さんの交際を問題視していたようなのに。
……考えても分からんな。
すっぱりと思考を放棄する。
やめだやめ。手元になんの情報もないのだ、分かるはずもない。
・
蘭ちゃんと園子様は他にもお見舞いに行くところがあるとかで、一足先に病室を後にした。
とは言っても、それが終わればまたここに戻ってくる。
それまでに私も立ち去った方が良いだろう。
「コナンくん、具合どう?」
「大丈夫だよ。ほとんどかすり傷だし…」
その肌を掠めた物のほとんどが、銃弾であるという事実を忘れてはならない。
聞けばコナンくんは作戦の立案者としての立ち位置にいて、作戦の実働部隊にはいなかったようだが、最後の最後で単身戦場に飛び込んだらしい。
その理由というのが、ボスが自決しようとしたのを止めに入るためだというから驚きだ。
「無茶しすぎだよ。蘭ちゃんにも怒られたでしょ。」
「ハハ…まあね。」
「まったく。……あ、そうだ。」
「言ってたよね。全てが終わったら、話してくれるって。」
コナンくんは目をパチクリさせて、「ああ」と思い出したように笑った。
「君は、何者なの?」
逃げ道を与えた自覚はある。
さあ、彼はどちらを名乗るのか。
彼は不敵に笑って、その名を口にした。
「江戸川コナン。……探偵さ。」
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作者名:しま | 作成日時:2018年5月8日 23時