216 ページ20
「飛雄にやるの？あ〜んを？」
と、まあ面白いくらい一気にテンションの下がった及川さんを他の方々が散々いじり倒しながら、そのまま解散になった。優しい彼らは家の近くまで送ってくれて、その後全員で来た道を戻って行った。
夕飯を作ろうとしていた相坂さんに「食べてきました」と言うと、彼は驚いて洗っていた鍋を手から落とした。そのくらい私の買い食いや外食はイレギュラーだと分かってはいたけれど、そう反応されると少し複雑だった。
「……だから、明日は午後からなら、大丈夫だよ」
『分かった』
「図書館にする？御家族いらっしゃるんでしょう」
夜九時、影山くんに電話をかける。元々この時間にかけると言っていたから彼はすぐに出た。勉強の進捗を聞いて、どうやら明日教えた方が良さそうだと勉強会の提案をする。
彼は御家族がいる時は自宅で勉強をしたがらない。というか私を家に入れたくないらしい。理由は分からないが、とりあえずそういう時は近くの図書館まで行くのだ。
電話の向こうで彼が頷くので、勉強道具を忘れないようにね、と念押しする。一度筆箱を忘れた彼なので念押しは必要だった。
『……機嫌』
「ん？」
『機嫌、いいな』
「ん、えっと……悪いか良いかで言えば、いいけれど」
相変わらず彼は私のことがよく分かる。案外私は一人よりも誰かといる方が楽しいので、今日みたいに人といっぱいお喋りすることは好きなのだ。ただ自分は上手く話せないから聞き手に回ることが多いけれど。
『…………』
「……影山くんは、今機嫌悪くなったね」
『うるせえ』
「あはは」
分かりやすい彼は私の笑い声を聞いて、少し気が抜けたみたいだった。さっきの不機嫌は何だったのかというくらいいつも通りに、迎えは、と聞いてきた。
「ううん、大丈夫。待ち合わせ、どこにする？青城からそのまま向かうから、影山くんのお家の前でもいいよ」
『遠回りだろ。あの公園でいい』
「こころ公園？分かった」
『どこだそこ』
「あの小さな公園の名前だよ。看板とかはないけれど、確かそうだったはず」
『……よく分かんな』
「たまたまだよ」
じゃあ、とお互いに言って電話を切った。少し長話になってしまったけれど、彼はまだ机に向かっているだろうか。
机の上に広げた医療分野の参考書を本棚にしまう。そろそろ本棚もいっぱいになりそうだ。最後まで使ったノート等も保管しているから悪いのだろうけれど、自分が頑張った証として見えて、少しだけ嬉しくなった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (
レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ReG | 作成日時：2022年3月22日 15時
