さかいめのあくむ ページ37
リン――……リン――……
鳴り響く鈴の音。舞う桜の花弁。
木霊して何度も何度も反響する音。
ゆっくりと目を開ければ、幾重にも続く鳥居。
足元には敷き詰められ咲く、紅く赤い――おどろおどろしい彼岸花。
【――如何して、此処に居るんだっけ。】
手に持って居た大きな提灯に、蒼白い炎がボオッと灯った。
リン――……リン――……
近付く音に顔を上げれば、一番始めの鳥居の向こうに顔を覆ったひとが居る。
『「――――おいで 此方においで」』
何個もの【眼】が描かれた紙の下から、優しい響きの声が聴こえた。
『「――――踏み出しておいで さぁ」』
澄んだ音。香る華のにおい。
【――其方に、行けるの?】
提灯の炎が一層、燃えた。
ゆっくり、鈍く重い脚を動かして一歩、進む。
くらい、くらい道 あかい、あかいはなを踏む。
ゆっくり ゆっくり、あるきだす。
鳥居の一歩手前。大きな鳥居が、
『「――――はいって 此方においで」』
あしを、ふみだして、いっぽ。
リン――――…… 『「おいで」』
《主さん!!》
リン――――…… 『「おいで」』
《__っちゃ駄_!》
リン――――…… 『「此方に」』
《__って来て! __れな_で!》
《主!》
……嗚呼、一寸不思議。
貴方が「兼さん」じゃあなくて、私を大声で呼ぶなんて。
……膝丸も、そんなに呼んで如何したの?此処に髭切は居ないみたい。
……嗚呼、私は__?
『「おちて」』
【__向こうに、行かなきゃ__】
手を差し伸べる人物。朧気に揺れる影。
私を侵食する様に、足下から黒い手と花の
【__手を、握って__】
「主様」
人物の後ろ、私の正面から突風が吹いた。強い風に思わず目を瞑って、躯を縮こませる。
持って居た提灯が足下に堕ちて、蒼い炎が爆発的に燃えて跡形も無く消えた。
炎に炙られ、ギィギィと啼き乍ら黒い手が焼け朽ちて逝く。
「駄目ですよ。其方に堕ちたら」
声が響いて、暖かい手のぬくもりが指先に沁みていく。
目が合えば、彼は柔らかく微笑んで呉れた。
「……二人が主様を呼んでます。此処は僕に任せて、主様は戻って下さい」
華奢な体躯なのに、私より少し大きくてあったかい手。
段々と躯に力が巡り、霞が掛かった様にボヤけた意識がはっきりして来る。
『……物、吉……?』
きらきら輝く亜麻色の瞳には、私が確り写ってて。
「はい。物吉貞宗――貴女の幸運の刀です」
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乙女になりたい。(プロフ) - お疲れ様でした!!とても楽しい作品でした!! (2020年10月11日 1時) (レス) id: a5fb63b44e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - あやとりさん» お久しぶりです、僕の方こそ有難う御座います!続編も合わせ、是非とも宜しく御願いします……♪ (2018年3月10日 22時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
あやとり - 焼きまんじゅうさん» ふわぁ…私こそ毎回この作品を楽しませていただいき本当にありがとうございます!これからも頑張ってください! (2018年3月10日 20時) (レス) id: bfcb2a7bd0 (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - はい、複数人ならば構いませんよ!リクエスト有難う御座います……☆ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
優梨奈(プロフ) - 粟田口と三条(でもいいんですかね?)でお願いします! (2018年3月10日 20時) (レス) id: 7cf4248c7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:焼きまんじゅう | 作成日時:2017年10月9日 5時