【第拾話】 横浜：探偵社内：応接室 ページ16
「あ。やっと来たね、敦君」
三人が入った応接室には既に太宰が待機しており、机には少し大きめな救急箱が置かれて居た。
「先ず、話を聞く前にお二人には此方で簡易な手当を受けて頂きたいのですが……宜しいですか？」
にこにこ。人当たりの良い笑顔を顔に貼り付けて太宰は膝丸達に
「……嗚呼」
「……失礼します」
膝丸が奥――窓際に座り、堀川が応接室の入口側に座った。……刀を手放さずに。
二人が完全に腰掛けたのを見て、太宰は救急箱を開いて差し出す。
「手当は……ご自身で行いますか？」
太宰はこの時、二人……特に堀川が太宰と敦を警戒して居るのが判った。
顔は伏せて居る堀川だか、堀川から滲み出る冷たい『気』は明らかに太宰と扉付近に立つ敦に向けて居る。
其れは『警戒心』？『敵意』？ 太宰は気付かないフリをする。
(……刀剣に武具。社長と同じ位か……否､それ以上かな？
全く……敦君は厄介な人達を拾って来たねぇ……)
太宰の冷静な観察を微塵とせず、膝丸達は傷の手当を開始する。
霊力を使った手入れ以外に完治する方法等無いが、簡易な手当でもしないよりはマシだ。
二人は躯に付いた傷と『前』の様にボロボロの姿を見て何処か其れを懐かしく思い乍ら、手当をする。
洗浄、消毒……「血止めは出来て居るか？」と膝丸が聞き「大丈夫です」と答えた堀川に包帯を渡した。
テキパキと進む手当を見て、敦は太宰に小さく声を掛けた。
「あの、太宰さん。……一寸良いですか」
「ん？何だい敦君」
太宰を応接室から連れ出し、敦は
『凡て名を教えるな』
『許可なく己の事を話す事は出来ない』
「ふぅん。許可なく、ねぇ？
……敦君、彼等があの女の子を何と呼んで居たか判る？」
「え？えぇっと……」
敦は必死に二人が少女の名前を呼んで居たか、思い出す。
(名前、呼んでたっけ？……あっ、最初に路地裏の角で会った時…)
《僕等の主……大切な人が！》
「……あるじ？
そうだ！慥か『主』って呼んでました！」
敦と鏡花が堀川と会った時、慥かに堀川が「主」と云う名を出した。
「……主か。成る程ね」
太宰は顎に手を置き、目を細める。
(恐らく女の子は「主」何て名前じゃない。
女の子とあの二人は主従関係、と云った処か……
でも『名を教えるな』は？
『凡ての』と付いて、まるで名を知ったら何かある様な口調だ)
思考する太宰を、敦は黙って見て居た。
【第拾壱話】 横浜：探偵社内：応接室→←【第玖話】 横浜：探偵社：探偵社内
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乙女になりたい。(プロフ) - お疲れ様でした！！とても楽しい作品でした！！ (2020年10月11日 1時) (
レス) id: a5fb63b44e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - あやとりさん» お久しぶりです、僕の方こそ有難う御座います！続編も合わせ、是非とも宜しく御願いします……♪ (2018年3月10日 22時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
あやとり - 焼きまんじゅうさん» ふわぁ…私こそ毎回この作品を楽しませていただいき本当にありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2018年3月10日 20時) (レス) id: bfcb2a7bd0 (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - はい、複数人ならば構いませんよ！リクエスト有難う御座います……☆ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
優梨奈(プロフ) - 粟田口と三条(でもいいんですかね？)でお願いします！ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 7cf4248c7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：焼きまんじゅう | 作成日時：2017年10月9日 5時
