何でも屋の変人たちよ

拒否権のない依頼 ページ6

何でも屋は、武装探偵社のある建物の三階に位置している。

一階が喫茶うずまき、二階は弁護士事務所、三階は何でも屋、四階が武装探偵社というわけだ。

探偵社とほぼ同じ内装ではあるが、違うところもある。

それは匂いだ。

最近雇った、とある少女のおかげで餅と七輪の炭の匂いが充満している。

今日も変わらずの匂いを感じながら、例の依頼人が待つソファに向かう。

「異能特務課が、ウチになんの用で？」

そこにいたのは異能特務課、坂口安吾。

彼は以前、ポートマフィアの潜入捜査で色々あって、あまり好いている方ではない。

寧ろ性格が合わないので、何があろうと苦手なのも変わらない。

「何でも屋に用があるのではありません。貴女に用があるんです」

世界の異能力者は、それぞれに番号を与えられている。

如何して全員に付けられているのか、如何して全員に付けられるのかは分からない。

安吾にも聞いたことがあるが、立ち入ってはいけない事情があると、はぐらかされた。

番号で呼ばれた場合、殆どの命令には逆らえない。

異能特務課の個人的な依頼となれば、そういう話になる。

それでも番号を呼ばなかったのは、安吾の優しさからだろう。

これでも彼とは、結構古い付き合いなのだから。

「近隣で、白虎が出るという話は知っていますね？」

「あぁ、けどそれは軍警が如何にかするんじゃないか？」

そういう問題ではないんです、とその白虎についての懸賞金の話を聞いた。

「やべぇな、組合か。……やべぇな」

「著しく消えていく語彙力を如何にかしなさい」

その白虎が如何して懸賞金をかけられているのかは、未だ謎に包まれている。

大方『本』に関することで間違いないだろうが。

「その白虎を、捕獲すればいいのか？」

「いえ、保護です」

「捕獲じゃん」

「保護です」

真顔で言い切る安吾に、思わずため息が零れた。

『組合』というのは、異能特務課非公認の非合法組織。

本来であれば、異能開業許可証のようなものを得てから活動しなければならない。

つまり組合はそういう、いただけない仕事をしている組織ということだ。

そんな奴らに『本』に関連するものが渡れば、世界が壊れる。

もしくはそれだけでは済まされないだろう。

「仕方ない、引き受けるよ」

「ありがとうございます」

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