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序章 少女の涙 弐 ページ2

少女は夢を見ていた。

懐かしくて、とても優しい記憶。

その夢には、少女の祖母がいた。

「おばあちゃん!あそびにきたよ!あそぼ!」

秋頃のことだ、庭に見える銀杏の葉は黄色く色づき始めていた。

昔ながらの平屋の縁側で、祖母は座っていた。

少女はぱたぱたと音をさせながら、祖母の膝に座る。

「おやおや、よくきたねぇ。そうだ、おばあちゃんね、渡したいものがあったの」

そう言って祖母自身の首に下げられた首飾りを、少女の首にかけた。

銀色のチェーンに小さな宝石といった、質素なものだったが少女は喜んだ。

「ありがとう!おばあちゃん!」

少し冷たい秋風に吹かれながら、少女は沢山話をした。

楽しかったこと、母親に怒られたこと、父親と遊びに行ったこと。

祖母はいつも黙って話を聞いていた。

「おばあちゃん、おはなしきいてる?」

そう言って祖母を見上げるが、返事は返ってこなかった。

おそらく寝たのだろうと思った少女も、時間が経つにつれ睡魔が襲ってきた。

「おやすみ…おばあちゃん…」

少女は祖母から、徐々に体温がなくなっていることを気が付かなかった。



意識がはっきりし始め、今も自分の首にぶらさがる首飾りを握りしめた。

あの日以来、祖母には会っていない。

今の少女は、祖母が亡くなっていたことを理解している。

透明な雫が頰を伝い、それは溢れて止まらなかった。

何度拭いても、溢れてきて頰を濡らす。

何かが抜け落ちたように、悲しみが少女の感情を埋め尽くしていた。

雫がそれなりに収まった頃、自分が廊下で座っているのを自覚した。

「大丈夫ですか」

ふと声をかけられ、目線を上げると手錠をかけられたメイドの姿が目に付いた。

「なん…で…?」

「私が、貴女様のご両親を殺したのです。
お二人は、貴女様をそれは大事に育てていた。
大事すぎるほどに。
だから私が貴女様を開放して差し上げたいと思ったのです」

「それも今では、傍迷惑すぎるお節介でしたが」と続けるメイドの言葉に、全て合点がいった。

少女は祖母に、異能力というものの話を聞いたことがあった。

少女自身、軟禁状態にあった自分の環境に違和感を感じていた。

もしも自分が『制御できない異能力の持ち主』だったとすれば。

全てにおいて合点がいく。

いちメイドが、そんな話を聞かされているわけがない。

彼女が自分の両親を、ただの異常者として見ていたとしたら。

これは、なんて哀しい悲劇なのだろうか。

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作品ジャンル:アニメ
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名無しの遊霊 - 僭越ながら復活を果たしました、名無しの遊霊です。また自分なりに良いものが書けるよう精進していきますので、これからもよろしくお願いします。 (2019年8月26日 3時) (レス) id: 4dce8b1b93 (このIDを非表示/違反報告)
名無しの遊霊 - 天然石。さん» ありがとうございます!天然石。さんも受験お疲れ様でした!私のファンなんていないと思うのできっと大丈夫ですよwww (2019年3月8日 14時) (レス) id: 6423abd6f3 (このIDを非表示/違反報告)
天然石。(プロフ) - 受験お疲れ様でした。1500hitおめでとうございます。どれだけの人が見ていても私がいちばんのファンでありたい。と思いました。 更新待ってます (2019年3月5日 15時) (レス) id: a11c4ee981 (このIDを非表示/違反報告)
名無しの遊霊 - 天然石。さん» そうでしたか?表現の仕方は自分でも気が付きませんでした!というかここでも遂に敬語外すようになったみたいですねwwwありがとうございます。これからもなる早で頑張らせていただきます。 (2018年9月19日 18時) (レス) id: 486de41c9b (このIDを非表示/違反報告)
天然石。(プロフ) - メールに送ろうと思ったけど気力がないのでこちらへ なんだか表現の仕方がガラッと変わった気がする…?情景描写がとても好きです舞ちゃんが可哀想で仕方がない…鏡花ちゃんが好きじゃなかったらスマホ投げ飛ばしてたね…危ない危ない (2018年9月17日 18時) (レス) id: a11c4ee981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:伊織するめ | 作成日時:2017年12月9日 10時

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