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「…飢餓状態になったら力が暴走して暴れ出す、って訳でもねぇみたいだな。むしろ弱くなるなんて」
その能力は随分と厄介そうだな。なんて薄く笑みを浮かべながら、冷静に分析している。
「…なぁ、吸血屋」
そして、ローさんが放った言葉は、
「俺がてめぇを飼ってやるよ」
私の理解を容易に飛び越える、理解し難いものだった。
◆
飢餓状態になったAを壁まで追い詰め、両手を掴んで壁に押し付ける。そのちっせぇ手と細い腕は、俺の手だと片手で簡単に掴みあげることが出来た。
「俺がテメェを飼ってやるよ」
そう言うと、Aはまるで狐につままれたような顔をして、俺を見上げる。依然として息は荒いままだ。
「分かんねぇのか。いつ野垂れ死ぬかも分かんねぇお前を飼ってやろうって言ってんだ。
俺なら、お前に安定して
俺に自由を奪われ、荒い呼吸を繰り返すAは、血が足りないせいだろう。弱い力で身じろぐ。
本人は必死に抵抗しているつもりなのか知らねぇが、大した抵抗にもならないその行為は、無性に加虐心を煽るだけだった。
目を覚ましたAは、その瞬間から飢餓状態に陥っていた。
赤く染まった頬、荒い息、唇を舐める仕草。そして、“情欲”に染まって潤む瞳。
その姿は、確かに俺の血を欲していて。
本来なら俺は危機感を感じた方が良かったのかもしれないが、そうなったAの姿に欲してしまっている自分が居て、『捕食される』ということに恐怖心は抱けなかった。
もしかしたらそれもAの持つ実の能力。
「……食事くらい、…っはぁ、…自分で、確保できます」
「ほお、その割には随分と追い詰められているみたいだが」
「…それは、っ」
「まだ質問に答えてもらってなかったな。もう一度聞く、何故、怪我していることを素直に言わなかった？」
「……っ、だって、…」
「血を飲めばすぐに治るから、か？」
そう問いかけると、Aは気まずそうに目を伏せた。矢張り正解らしい。
俺を庇った時に1度怒ったのが効いているのだろうか、表情を曇らせる。俺を怒らせるようなことをしたという自覚があるだけまだマシだろう。
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作者名：幸せうさぎ | 作成日時：2023年2月11日 3時
