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「えっ…ええ、まって、うそ……」
まって、と うそ、しか言えていない。
それも仕方ない。だって、あの中には…
さぁ、と血の気が引いた。まって、非情にまずいかもしれない。
血さえ飲めば全部解決だと高を括ったいた私は、その時ようやく、自分がもうかなり出血していることを再度感じ取って、ふらりと崩れ落ちた。
正直意識も朦朧としかけている中、今まではアドレナリンといつでも血が飲めるという安心感で動いていたようなものだった。
私の様子に異変を感じたのか、先に梯子を登っていたローさんも降りてくる。
「どうした。」
「……ええと、その、ポーチを落としてしまって…」
私の落胆ぶりを不思議に思ったのか、ローさんは怪訝そうだ。
「おい、まさか大事な形見が入ってる、なんて言うつもりじゃねぇだろうな」
「戦場にそんなものを持ち込むような馬鹿に見えます？」
「見えねぇな、じゃあ何をそんなに落ち込んでる」
「ローさん…も能力者ですもんね…」
能力者じゃ無ければ水路に入って鞄を探すなんて別に余裕だっただろう。だがそもそも、能力者じゃ無ければあのポーチに用は無いのだ。
「あのポーチの中………専用の採血セットと……血液が入っていたんです………」
そう言うと、あっけらかんとした調子で「そうか、それは残念だったな。諦めろ」とローさんは言った。そりゃそうだ。大した事じゃ無いと、ローさんなら判断するはずだと…私も思う。
けど、私はかなり追い詰められていた。
私は、注射器無しで血を摂取することは現状ほぼ…出来ない。そんなのローさんに言っていないけれど。
そしてストックの血液も失ってしまった。その上、今はもう、怪我も治す力が無いくらい私は血液に枯渇しているのだ。
「……ローさん、今日は矢張り、一先ず帰りましょう。」
「…は？？」
数分前と打って変わって意見を変えた私に、ローさんが驚くのも無理は無い。
「…私はもう、能力を使えません。あの中に入っていた血を飲めば全て解決だったのですが…」
まさか落とすなんて。と項垂れる。
変に強がらず、適当な理由をつけてもっと早く飲んでおけばよかった。
「どういう事だ。血なんて…次の敵のアジトで適当に取ればいいだろ」
「その血液をとるための注射器を落としてしまったんですよ」
はぁ？と、怪訝な顔をしているローさんを見る。けど、それよりも、もう既に私の意識が限界を見せ始めていた。
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作者名：幸せうさぎ | 作成日時：2023年2月11日 3時
