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ふ、と微かな息を吐いて、ローが緩やかに目を細める。
これは多分、笑っているのだろうとAはだんだん分かってきた。
「行くぞ」
こくりとAが頷いたのを確認したのだろう、振り返ってこっちを見ていたローが体を前に向き直し、目先にある扉を真っ直ぐ見据える。
「敵は複数居るが恐らく強いのは2人。1人は“大剣使いアシュロフ”1600万の賞金首。そしてその部下“二丁銃のパトーネ”1000万の賞金首だな。」
「あの中に、2人とも居るかと」
「俺がアシュロフをやる。てめぇはまず雑魚をやれ。」
「……っ！まってください」
「それと、居るんだろ。中に」
ローの言いたいことを即座に察する。
多分、捕まっている人達の事だ。
先程名簿を確認した時に見たのだ。今日複数人の買い手先が決まった“商品”が出荷されると。そしてその中には、子供も沢山居た。
「吸血屋はまずそいつらを逃がせ。俺らが入った時点で中は戦場と化すからな。」
「でも、そんなことしたら……っ！」
貴方が危険でしょう、と言おうとしてしまって、Aははたと口を噤んだ。
＿＿＿違う。私は彼を利用しているのだから、むしろ危険な役目を彼に引き受けてもらうことは、喜ぶべき所なのに。なのに。
「異論は認めねぇ。俺も試してぇんだ」
この海で、今の俺がどれだけ通用するのかをな。とローさんは呟く。
……本当に、不思議な人だ。
全てを見透かすように、悟ったように、まるで地獄の底を見てきたかのような冷たい瞳をする人かと思えば、
こうやって純粋に興味や興奮のまま、何か悪巧みする子供のように、無邪気な顔をしたりする。
呆然とするAを置き去りにしてさっさと前に進んだローは
「もうコソコソする必要はねぇな」
そう言って、目の前の扉を容赦なく開け放った。
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作者名：幸せうさぎ | 作成日時：2023年2月11日 3時
