放浪少女は今日も自由に海をいく【ONEPIECE】 (ページ23)

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ハクガン side

◆

海賊船の朝は早い。

日の出と共に錨を上げ、帆を張り、風と天気を読み、1日の指針を決める。

ウチの船は潜水艦だが、ずっと潜水しているわけでもない。船員の体力然り、船のエネルギー然り、どれも有限である。
それに暗い夜の海を潜水する危険は多い。
天気のいい夜は普通の海賊船と同様、浮上したまま錨を下ろし、不寝番以外は皆眠る、というのが基本的なサイクルだ。

そして今日も、操縦を任されている俺は、航海士であるベポと共に1日の予測を立て、最終決定の指示を仰ぐため船長室へ来ていた。

朝一番でも基本的に船長は起きているので、いつも通り、ノックをする。
そこまでは本当にいつもとなんら変わらなかった筈なのに、帰ってきた声に驚いた。そしてあれ、と首を傾げる。

「いいよ、入って」と、返って来たのが船長の声じゃなかったから。女の人の声…Aさんか、と脳内で答えを出して、こんな朝早くから船長に用事とか、大変だなぁなんてぼんやり考える。
船長はあまり寝てないせいか、朝はいつにも増して静かな上、機嫌が悪いこともしばしばだ。

が、船長室に入った俺は、もっと驚くことになった。

扉を開けると、Aさんがソファへ座っていて、「おはよう」とにこにこ笑っている。電話で初めて会話した時とは違う、細くて滑らかな声。
電話の時はとても溌剌としていて明朗な印象を受けたのに、今はそんな活発な印象は全くない。

不思議な人だなぁと思いながら船長はどこかと見渡すけど、居ない。はてと首を傾げた所で、Aさんがくすりと囁かに笑う。

「ごめんね、今ローくん寝てるから後にしてもらおうかな、航海はしばらくこのまま帆を張って進むのでいいよ。」

へ、と声を出す前に、Aさんが人差し指を立てて形の綺麗な唇の前へと持っていく。
3度ほど瞬きをしたあたりで、Aさんの膝＿＿＿＿を枕に、ソファで船長が横になっていることに気付いた。

全く予想もしていなかったこと過ぎて、気付けなかった。

声を出さずにぺこりと一礼だけしてそそくさと船長室を出る。へにゃりと笑ったAさんが手を振っていた。