． ページ26
「怖かったな。大丈夫だ、それは夢だから。」
「…っ、えーす、っ」
自分から飛び込んだのか、彼に抱き寄せられたのか。それとも両方だったのか、分からない。
でも嫌じゃなかったし怖くもなかった。気付けば彼の腕の中、ぎゅうと、でも優しく抱きしめられていた。
「……こわいの、こわくて、いたかった」
「…無理に思い出さなくていい、全部忘れていいから」
「わすれられないの、わすれたい、のに、」
「……そう、だよな、……」
優しく抱きしめられたまま、私の髪の毛をゆっくり撫でるエースが、何度も何度も「大丈夫だ」と「おれがいる」と言い聞かせてくれる。
自分でも何を言っていたか分からない。ただすごく怖かったこととか辛かったこととか、そんな思いを吐き出していたんだと思う。
＿＿＿＿…
しばらくそうしていたと思う。
自分の状況がよく分からなくて、目線だけを動かして辺りを見回す。全く知らない場所だった。木造の部屋に見える。私は簡素なベッドで寝ていたらしく、今は床に座るエースの腕の中にいた。
「…ここ、は」
「…俺が乗ってる船、モビーディックの中だ。」
悪い、勝手に連れてきた。と謝られる。
何故そうなっているのか、あまり良く思い出せなくて、私はううん、と首を傾げる事しか出来なかった。
段々と落ち着いて来た私は、少し恥ずかしくなってきて。
高校生にもなって泣きながら人に縋り付くなんて、子供みたいだ。
それに、エースの胡座の上に乗るようにして、横抱きにされている私は、彼の腕の中にすっぽりと収まっている。
彼はいつも通り、上半身は半袖のシャツを羽織っただけの軽装だから、私の顔の横には分厚くて逞しい胸板があって、直接触れる彼の体温と肌に、鼓動が段々と早くなってしまう。
遮るものも無い密着しているこの状態では、その鼓動も自分の顔に集まる熱も何もかも伝わってしまってるだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 145人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あゆ(プロフ) - エースと恋に落ちる作品もう一作みたいです;; (2023年2月9日 15時) (
レス) @page38 id: d18f4b6c2a (このIDを非表示/違反報告)
幸せうさぎ(プロフ) - chiさん» コメントありがとうございます！なんとか完結まで持っていけて良かったです…！最後の更新に時間がかかったにも関わらず、見ていただきありがとうございました！！ (2023年2月9日 9時) (レス) id: b10acb6a2f (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - なけた( ´:ω:` )おつかれさまでした (2023年2月6日 18時) (レス) @page37 id: 6cc6324467 (このIDを非表示/違反報告)
幸せうさぎ(プロフ) - ベルモットさん» ベルモットさん。眠り姫シリーズも読んでくださってるんですね…！嬉しいコメント本当にありがとうございます！ (2023年2月6日 18時) (レス) id: b10acb6a2f (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - 眠り姫シリーズから読み始めました。引き続きこの夢小説に行きつきました。シリーズを通し一貫して雰囲気や伝えたいことが似ている部分もあって安心感があります。 (2023年1月30日 11時) (レス) id: 9942db35dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：幸せうさぎ | 作成日時：2023年1月28日 21時
