#01 Whitesmoke ページ1
◆
雨の音が好きだ。
＿＿＿＿私は雨が好きだから。
薄灰色の雲が分厚く覆って、世界を薄暗くしている。
空は、ほんの少し青みを混ぜてくすみ、鉛色に藍をにじませていた。
天から絶え間なく水が降り注ぐ、なんて。
当たり前の事なんだけど、でも、どこか面白おかしく感じないだろうか。
もしかすると、私達とは別の世界に生まれた人が、私たちの世界で降るこの雨を見たら、『なんだこれ、おかしな世界だな！』って笑うかもしれない。
………私はそんな『想像も出来ないことが当たり前にある世界』を想像して、物思いにふけることも好きだった。
降り注ぐ雨が屋根と窓に当たってばたばたと音を立てている。
そんな音を聞きながら私は本を読んでいた。
部屋の中にある少し大きめの出窓。その横にスツールを置いて、そこに膝を抱えて座って本を読むのは私の雨の日の日課だった。
今日読んでいる本は、平凡な女の子が持ち前の正義感で色々な事件を解決していくという話。帯に『痛快！予測不能な衝撃のラスト！！』なんて書いてあったから買ってみたが、普通に想定内のラストだった。
個性的で面白い家族の元に産まれ幸せに育ったハツラツな女の子が、色々な事件にやたらと首を突こんでいく。まぁそうしないと物語は始まらないから仕方ないのだけれど、私は何故かこの主人公が好きになれなかった。
この物語の女の子が解決した事件を起こした『犯人』は、一体どういう理由があってどんな過去があって何の為にそんな事件を起こそうと思ってしまったのか、私は知りたくなった。この物語にはそれが書いていなかったから。
物語の登場人物達に感情を重ねる。私が同じ立場、同じ生い立ちだったなら。私だって罪を犯すし酷いと言われる事件を起こしたかもしれない。
世間から嫌われる悪人にも、なにか深い理由と信念があったが故の行動だったのかもしれない。
自分の目で見て感じた物以外、真実かどうかなどは分からない。
面と向かって喋ったこともない人間の事を、とやかくいう権利なんて本当は誰も持っていないはずなのに。
………ぱたんと本を閉じて、
私は薄灰色の空へと目線を移した。
「……まだ暫くは止まないかな」
それならば、いくらか安心して眠れる。
ずっと本を読んでいたから眠たくなってきてしまった。
私は本を傍らに置き、体を丸めるようにして抱き寄せて、ゆっくりと目を閉じた。
＿＿＿＿どうか、まだ降り続いて下さい。
降り注ぐ雨が、私は好きだから。
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シンヤ(プロフ) - 更新楽しみにしています (2023年1月26日 19時) (
レス) @page37 id: 42d6be6a70 (このIDを非表示/違反報告)
皐月 歩(プロフ) - めっっっっちゃ好きです！！文の構成に、そのおかげで浮かぶ鮮やかな景色。現実にいる時に映る景色は灰色なのに、あの岬に来ると鮮やかに色づく景色。世界観もなにもかも大好きです！楽しみに続きを待ってます、無理せず頑張ってください！ (2023年1月25日 22時) (レス) id: a5856dc1fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：幸せうさぎ | 作成日時：2023年1月23日 11時
