Episode 16 ページ16
* 不死川side
.
___ あれから、2人で人通りの少ない道を歩いていた。
静けさが心地よく感じられる瞬間、
周りの音はただ風の音だけで、
踏みしめる足音さえも柔らかく響いた。
「 ちったァ、人間味のある顔に戻ったなァ 」
「 えっ 」
沈黙を破った声に驚いたのか、Aがびくりと肩を上げた。
「 何それ〜、元々人間ですけど! 」
「 はァ?そういう意味じゃねェよ 」
.
___ Aが突然消えてから数日後、
正直俺はAと伊黒に腹が立っていた。
大好きな師範が殺されたからなんだ、
大好きな両親が目の前で殺されたからなんだ、
気持ちは痛い程分かるが、
アイツは鬼殺隊だ、そんな事重々承知だろう。
それを許している伊黒も、甘すぎる。
惚れてる女だか何だか知らないが、
アイツがそれを許すなんて…と思っていた。
1度ガツンと言わなきゃ気が済まないと思った俺は
伊黒が任務の日に、蛇柱邸へと足を運んだ。
アイツの事だ、馬鹿みたいに幸せそうな寝顔で
ぐっすり寝てるんだろう。
そう思い戸を開け、庭へ足を踏み入れた時だった。
「 ___ なんで、なんでなんでなんで、
私が死ねば、代わりに、私が、私が 」
縁側に蹲り、酷くやせ細った姿で涙を流し、
ひとりブツブツと呟く、月明かりに照らされたAの姿が見えた。
( 不死川さん、おはぎ食べに行きましょう!不死川さんの奢りで! )
( 不死川さーん、もう少し後輩に優しくしてください )
( 伊黒さんにどれが似合うと思いますか? )
それと同時に、前までのAの姿が思い浮かんだ。
小さい身体でいつも俺の周りをウロチョロしてたA、
伊黒の話を笑顔で、でもどこか恥ずかしそうに話していたA、
実の妹なんじゃないかと思うくらい、懐いてくれていたA。
涙を流した姿なんて、俺は今まで1度も見た事が無かった。
「 ___ッチ 」
現実を受け入れられず、
それと同時に、
先程までAと伊黒を責めていた自分に腹が立ち
俺はその日逃げるように蛇柱邸を後にした。
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作者名:うるりもち | 作成日時:2025年9月15日 2時


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