Episode 13 ページ13
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その日の夜は、とても綺麗な満月だった。
Aはというと、
俺の布団に座り 窓の外をじ_っと見つめている。
驚いた事に、小さく鼻歌を歌いながら見つめているのだ。
いつものAの調子なら きっと涙を流しているであろうに、
違和感はある、が… いや、
本来これはこれは喜んで良い事なのだろうか?
「 お月様って、こんなに綺麗だったっけ 」
「 …君はずっと 月が好きだった、
いつかの合同任務の日なんて、これから任務だと言うのに
月が綺麗だと目を輝かせていた 」
ぽつり、と Aが呟いた言葉を拾う。
いかん、昔の話はしない方が良かったか_と思い
Aを見ると、一瞬キョトンとしたものの、優しく笑った。
「 伊黒さん、私、そんなに月好きでしたっけ 」
「 …?
そんなに…というか、君はとても感性が豊かでね、
様々なものを「綺麗、可愛い」と言ったりしていた 」
「 それでそれで 」
「 …感性が豊かというのも、
君は他人の気持ちに寄り添う力や思いやりが一倍強い、
俺はそう思っているし、思っていた 」
何をそんなに気になる事があるんだろうかと思いながらも
そう続けると、
Aが隣に座る俺に突然抱き着いてきた。
「 …? A、どうし___ 」
「 今日の蝶屋敷での事、改めてごめんなさい
無神経な事言って、伊黒さんを怒らせてしまって 」
ぎゅう、と抱き締める力が強くなったかと思えば、
すぐに体が離され、Aと目を強制的に合わされる形になる。
「 ___ 私の事、
ずっと見ててくれてありがとうございます。
私にまた居場所をくれて、ありがとう」
微笑みながらも 涙を浮かべそう言うAは、
月明かりに照らされて、とても綺麗で
今のAは、以前のAにしか見えなくて
その姿を、言葉を、俺に向けてくれた事がとてつもなく嬉しくて
でも上手く言葉に出来なくて、
代わりに 自身の目頭が熱くなるのが分かった。
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( 地獄のような苦しみで、私の居場所は伊黒さんだった )
( 居場所という名の、天国 )
( 伊黒さん、私、もう1度立ち直れるかな )
( どうか、どうか、ずっと生きていて )
( この天国なような場所で、一緒にいたいの )
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作者名:うるりもち | 作成日時:2025年9月15日 2時


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