Episode 02 ページ2
.
____ 俺がAと初めて出会ったのは、蝶屋敷だった。
.
彼女はその頃、煉獄の継子として修行をしていた。
俺は会った事など無かったが、
煉獄から 新しい継子を迎えたとよく話を聞いていた。
よく笑い、よく泣く、とても明るく、そしてとても強い。
「 Aは可愛い後輩だ! 」と、
彼女の話をする時は決まってそう言っていた。
____ その為、胡蝶と話しているのがAだとすぐに分かった。
「 Aさんは私より小さいのに、とても力強いですねぇ 」
「 えへへ… 師範に毎日稽古をつけて頂いてますから!」
替えの包帯を貰おうと、部屋に入ろうとした足が止まる。
雪のように清らかで、透き通るような白い肌、
夜の闇よりも深く、美しい 黒い髪、
鈴を転がしたように笑う、美しい顔立ち。
____ 綺麗だ、なんて思っていると、
立ち尽くしていた俺に胡蝶が気付く。
「 …伊黒さん、盗み聞きでしょうか?
貴方がそのような事をするなんて、とても珍しいですねぇ 」
「 ! 」
くすくす、と笑いながら続ける胡蝶の声を聞くやいなや、
閃いた!と言わんばかりの顔をして、
俺の前へと てくてく と歩いてくる彼女。
「 師範からよくお名前は聞いておりました…!
__ 初めまして、 Aと申します 」
.
____ それからAとの仲が深まるのに、時間はかからなかった。
俺とすれ違う度に、「伊黒さん!」と明るく話しかけてくるA。
街で有名な甘味処へと連れて行ってやれば、
目を輝かせながらあんみつを食べている。
俺はあまり自分から話を振るのが得意でないが、
Aはお構い無しに、いつも楽しそうに自分の話をしていた。
「 伊黒さんのお隣は、師範とは違った安心感があります! 」
「 … 君は本当に、変わっているな 」
「 私もそう思います! 」
「 おい、そこは否定しないかね 」
鬼や己の過去を忘れ、普通の人間だと錯覚してしまう程
Aの隣は とても居心地が良かった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 193人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:うるりもち | 作成日時:2025年9月15日 2時


お気に入り作者に追加

