検索窓
今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:14,447 hit

ページ4

「なるせは好きな人いるの?」

いつもの様に話を聞いていると、Aが爆弾を落とした。心拍数が増し一気に体温が上がったせいか、窓から入ってくる風が異様に冷たく感じる。

「__いるよ。ずっと前から、とても愛おしい人が。」

もしこの気持ちに嘘をついてしまったら、自分の存在意義が消えてしまいそうに思えて。君の心には届かないこの気持ちを声に出した。

「へー!その人は幸せ者だね。」

「え、なんで?」

純粋な恋愛感情なんて可愛いものはなく、独占欲で溢れているのに?そんな俺に想われていると知っても、君は幸せだと言える?

「ずっと好きなんでしょ?すごいことだよ!長年同じ人を好きでいるって、到底できることじゃないと思うの。だから、それができるなるせに好かれてる人は、とても幸せ者。」

そう思ったの、と誇らしげに語るAの言葉が、ストンと胸に落ちた。

「ちゃんとその想い伝えなよ?」

「うん。いつか伝えるよ。」

そう言うと、Aはふんわりと笑う。君にこの想いが伝わって結ばれたら、どんなに幸せだろう。

「私も伝えないとなー…」

小さく呟かれたその声に胸が締め付けられ、数日前のことを思い出す。

課題資料を探すためにAと図書室へ向かった。中から話し声が聞こえこっそりと覗けば、蓮と一個上の先輩で何やら話していた。ふと、Aに手を握られる。その手は震えていて、顔を苦しそうに歪ませていた。それもそのはず、蓮が先輩を見る目は愛おしい人を見る目だった。今ここにAをいさせちゃダメだ。そう思い、とにかく図書室から離れた。

「A…」

なんて声をかけよう。色々と考えてみたが、どれも違うように思えた。

「なるせ。私さ、もう少し頑張ってみてもいいかな?」

顔を上げ、ぎこちない笑顔でそう言った。手も唇も声も震わせ、弱々しく発せられた言葉はしっかり俺の耳に届いた。

「Aがそれを望むなら…俺は最後まで見守るよ。」

その答えが正解だったのか、Aの震えはおさまっていた。

数日前のことを思い出しながらAを見ると、どう告白しようかと考えながら曇り空を見ていた。すると、Aが俺の名前を呼んだ。

「ねえ、なるせ。またお話聞いてね。家に行くからさ。」

この先にある結末を分かっているような悲しそうな声でそう言った。俺にとってそれは、残酷な願いだった。

「おう。」

溢れ出る気持ちを抑え、窓の外に目を向けた。曇り空は今にも泣き出しそうだった。

*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (23 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
40人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

飴依存症の人*神作掘り出し隊(プロフ) - すげえ…どれも良かったけど菊花さんので泣いちまったよ…。 (2019年9月13日 16時) (レス) id: 9ac419bf0d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:作者一同 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年9月11日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。