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坂田くんは数日後、無事退院した。
これ以上病院で出来ることがないらしい。しばらく様子見ということになった。

退院時、彼の元にはたくさんの彼の友人が駆けつけた。

ご飯食いに行こう、ゲーセンに行こう、カラオケに行こう。
坂田くんは友達に遊びに誘われていたけれど、全て笑顔一つと「今からデートやから!」という一言で跳ね除けていた。


初めて出会った場所。初デートの場所。私の家。私の実家。映画館。私が気に入っているアクセサリー屋さん。
数え切れないほどの思い出の場所を訪れた。

しかし、彼の記憶が戻るような気配はなかった。


今日は、比較的新しい思い出の場所にやってきた。



「ここ、って…」

「こっちだよ、坂田くん」



目を見開き、その建物を見上げる彼の手を引き、中へ入る。

奥へと足を進めるほど、奥からは賑やかな声が聞こえてくる。
あの日と同じような声が。

やがて建物を抜け、外に出た。
ちょうどその時、空にブーケが投げられていた。



「_けっこん、しき」

「私と坂田くんもね、ここで式を挙げたの」

「え…それって、」



半年前、私と坂田くん…いや、私も苗字が坂田だ。
私と悠くんは、半年前ここで式を挙げた。

私の両親と、悠くんのお父さん、そして私と悠くんの友達を集めて、この小さな式場で、しかし華やかな式を挙げたのだ。



「…何で、恋人やって言ったん」

「初対面の人にあなたの妻です、…なんて言われても信じられないでしょ?」

「それは…っ、そう、やけど」



彼は、それでも納得がいかないようだった。

眉尻を下げ、戸惑いの滲んだ顔で私を見つめていた。

…でも、まだ話すには早いから。



「さ、次行こ。どうしても、坂田くんと来たかった所があるの」

「…うん」



もう一度ぎゅっと彼の手を握る。

その手は、ひんやりと冷たくなっていた。

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設定タグ:歌い手 , 大型コラボ,合作 , 隠れた愛の言葉   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:作者一同 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年8月14日 8時

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