推しの綱海の妹になったんだけどこれなんてご褒美？ (ページ22)

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放課後、朝と同じように文化祭の準備に忙しくするみんな。部活は行っても良いことになっているのだが、殆どが教室に残って作業している。

私はというと、舞台に立つ人達と台本の読み合わせ中である。

「白雪姫や、優しくしてくれたお礼に、この赤くて美味しいりんごを差し上げよう」

なんと、魔女役は学級委員長だった。これを知ったとき、ぴったりだなぁと思ったことは誰にも言ってない。

「まあ、ありがとうお婆さん。一口頂きますね」

先生が印刷してくれたらしく、用意された人数分の台本を読んでいく。

とうとう白雪姫がガラスの棺に入れられてしまうシーンになった。ここで、小人達は口々に悲しみの言葉を口にし、そこへ颯爽と王子様(円堂(笑))が駆けつけるのである。クライマックスというやつだ。

「な、なんて美しい死に顔なんだ」

「円堂くん。今は読み合わせだから噛んでもいいけど、本番では噛まないように」

「はっはい……」

ニッコリと委員長が円堂に微笑みかける。怖い。目が笑ってない。円堂が冷や汗をかいてしまっている。

「ここで王子様と白雪姫のキスシーンになります。幕を操作する係は、ここで幕を閉じ始めてください」

このクラスの白雪姫は、最後まで劇をやらないらしい。クライマックスで終わらせて、締めに役の紹介をするそうだ。

「円堂くんは口元を手で自然に隠して、本当にキスしてるかのように見せること。こんな風に」

そう言うと、委員長は私の顔を両手で引っ掴み、極限まで顔を近付けてきた。

「ちょっと委員長！近い近い！」

「ごめんなさい。見本を見せないと円堂くんにはわかってもらえないと思って」

「まあ確かに」

「おい綱海！今のどういうことだよ！」

微かに赤い顔で円堂が反論してきた。そうだよね、やっぱり恥ずかしいよね。まだ中学生だもんね。キスとかしたことないよね。私もしたことないけど。

前の世界では高校生だったし、それなりに平気だったけど、相手が恥ずかしがるとこっちも恥ずかしくなる。

劇ってのはそういうもんだと思ってる。

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「俺は幕の操作係だし、まだ色恋沙汰とかはよくわかないけどさ」

「………」

「豪炎寺、お前顔怖いよ」

「……何のことだ」