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「え……これ、だけ……？」
そんな期待が、落胆に変わるのは一瞬だった。
ガランとしているのは部屋だけではなく、冷蔵庫もだったのだと思い知らされた。
「ええ〜…」と、間抜けな声が無意識に口から漏れる。
冷気漂う冷蔵室には、油揚げが2枚入った袋と、小さな容器に入った漬物のみがポツンと置かれていた。
「こ、これだけ…？ここの人たち料理とかしないのか…？」
さてはもしやと下の冷凍室、野菜室も咄嗟に確認したが虚しく、臭い取りの炭がコロンと転がるだけであった。
またしても「ええ〜…」と間抜けな声が出る。
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「お、沢庵だ」
パカ と容器の蓋を開ければ、良い匂いとは言い難い独特な香りが漂った。
一口台に切られたそれの、内の1枚を指で摘んで口の中に放り込めば、待ってましたと言わんばかりの唾液がじわじわ溢れ出す。
キツネ君ごめん、1枚だけだからと心の中で彼に謝罪しながらそれを味わうと、意外と…いや結構美味しかった。
強めの塩辛さが噛むごとに大根の甘味と少しずつ加わって、良い感じに食べやすい。
「これは白米と一緒に食べたい」と頭の中で白飯を3杯ほど思い浮かべたら、1枚だけで満足できるはずがなかった。
無意識に1枚、また1枚と、ひょいひょいっと沢庵を摘んでは口に放る的確なその動きはまさにつまみ食いのプロの如く。
見事なまでに都合の良いこの右手、止まることを知らず。
「………あれ？」
そしてハッと我に帰った頃には、左手に持っていた容器の中身は空っぽになっていた。
少し遅れて「やってしまった」という文字が頭の中に浮かんだ時、全身から汗という汗が一斉にふきだすのを感じた。
「ど、どうしよう」
焦りから軽いパニックを起こしながらもとりあえず容器を洗って、水切り台の上に置いておく。
蛇口からピチャンと滴る水滴を呆然と見つめながら、私は暫く無言で項垂れ、自分のミジンコ程も無い意思の弱さを責めるしかなかった。
「ああほんとどうしよう……絶対怒られるな……」
そう呟く自身の声の、なんと情けないことか。
それから、謝罪について悶々と考えた。
幾多の空き部屋、完璧なまでに手入れされた庭園。
広すぎるお屋敷。その他諸々。
それらはつまり、家主はお金持ちだと…ハッキリと証明している。
てことはつまり、土下座レベル…？いや土下座して済むの…？
「えっ弁償……？」
ワナワナと手が震え始める。
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みや(プロフ) - 羅胤さん» 羅胤様、初めまして！ご感想いただきありがとうございます！とても嬉しいお言葉です。改善点も視野に入れ、更新頑張ります！本当にありがとうございます！ (2020年12月2日 15時) (
レス) id: 56bc8124d6 (このIDを非表示/違反報告)
羅胤(プロフ) - みや様、初めまして。本作を読ませていただいたものです。改行が多い点は気になりましたが、文章がとても上手く、物語に引き込まれてしまいました。これからも是非、更新を頑張ってください。陰ながら応援しております。 (2020年12月2日 15時) (レス) id: 6b5b4b25ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みや | 作成日時：2020年11月1日 0時
