11.泣き顔 ページ11
・
「でもっ、小太郎の声だったよ」
「雨に紛れて幻聴でも聞こえたんじゃねぇの?」
ほら、雷の音とか、と付け加える銀時。
Aは眉を下げて、そんなはずないもん、と小さく呟いた。
その顔には銀時も弱い。
どれだけAが悪くてもその顔をされると言葉に詰まるのは松下村塾の仲間なら皆わかるだろう。
「入ってみる・・・」
「いや、いやいや、入ったらラーメン食わなきゃだから!な?俺金ないよ?」
「間違えましたって言うの!」
お金が無いのは本当のことで銀時はそれにも焦っていた。
ラーメンを食べさせられることになればそれこそ食い逃げをしなければならない。
いや、Aのポケットマネーで何とかなるかもしれないが。
銀時のストップも聞かず、Aは目の前の戸を静かに開いた。
それこそ、恐る恐る、という言葉が似合うだろう。
銀時もその状況を判断すべく
Aの開いた扉から中を覗く。
さてどうだろう、カウンターに座った桂小太郎が綺麗な女性と楽しそうに談笑しているではないか。
あちゃあ、と今世紀最大に銀時は後悔した。
無理やりにでも引っ張ればよかった。
Aは静かに固まり、しばらく動かない。
息をしているか心配になった銀時はAの鼻に前に手を置いた。
銀時がAが息をしていると確認できた時女の店主は2人の存在に気づいた素振りを見せた。
いらっしゃい、そう声をかけようとしたんだろう店主の声を一言も聞くことなくAは走り出しそれに合わせるように銀時もAをおいかけた。
「・・・いっ、おい!A!」
銀時がなんとかAに追いついた。
なんと言っても、忘れられやすいがAは攘夷戦争で名を馳せた紅の蝶でありこの小ささからスバしっこさはずば抜けていた。
銀時の身体能力を持っても、息を切らして走らないといけないほどだ。
やっと捕まえた細い腕の持ち主はわんわんと大きな声で泣いていて
銀時はその声に、顔に、目を濡れた腕で擦る彼女に胸が締め付けられた。
Aの泣き顔が、攘夷戦争で共に戦った4人全員1番苦手なものだろう、と銀時は強く思った。
・
136人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
RIO - 続きが読みたいです!!! (2022年3月14日 2時) (レス) @page21 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あい | 作成日時:2021年9月1日 0時