［歌い手］推しは兄でした。

5 フラグ回収はお手の物。前編。 ページ6

１１：００
「ひきこもりでもフェスがしたい！グッズ販売を開始しまーすっ。グッズは多めに入荷しています。落ち着いて、ルールを守ってお楽しみ下さい！！」
係の人が大声で宣言し、ドアが開いた。列になっているので、後ろの人に押し倒されると言うことはないものの、人の多さに早くも圧倒されている。(実は酔いやすい。そして本日、酔い止めを忘れた人)
初めはお互いに自由に回る。と言っても、欲しいものは決まっていて二人で分担を決めてある。

人の熱気に当てられながらも、きちんと買うものは買った。人の溢れ返る、中央から脱出し目印になりそうな時計の下で、葵に連絡を取る。

こっち終わったよ。葵はどう？
私ははじの方にある
時計の下にいるよ。 A

すると、すぐに既読が付いた。

葵 知ってる。後ろ。

なんのことかと後ろを振り返ると、なんとそこには葵が、いなかった。
「おい、一人芝居はやめろ」
「えっ！どうして、私の考えていたことが分かるの？も、も、もしかして、口に出てた？」
「おまえは夢小説の主人公デスカ？そんな事やってると、置いてくぞ」
「あっ、ごめんなさい。葵様置いてかないで」

さて、一通り買い物を終えた私達は缶バッチの売り場に並んでいた。もちろん、楽屋招待目当てで。元々、買うつもりではいたのだけれど、楽屋招待を当てたいなら、ギリギリまで買うべきだと言うことになり、他のグッズをあきらめ一人２０個。計、４０個。その中に２つ当たりがあれば良いのだが果たして・・・。

しばらくの間、並んでいた。
その間にも、ちらほら歓喜の声や係の人に続いてバックヤードに消えて行く人を見た。一体あといくつの当たりが入っているのだろう？
もう、実は終わっていて意味がないのでは？とネガティブな可能性ばかりが頭をよぎる。

いよいよ、私の番。
まぁ、考えたところで分かるわけもないので、適当に１９個取る。そして、右上から数えて３つ目のものを取る。「３」という数字にした理由は、縁があるから。
私の誕生日は３月３日。
お兄の誕生日は１１月３日。
私が入院し始めたのも、３月１５日。
何かと、重大な日は「３」が占めている。

はじの方に設置されている、テーブル。そこに４０個の、缶バッチを並べた私達は、

「さあ、開封と行きますか」

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