［歌い手］推しは兄でした。

12 「わ」「す」「れ」「て」「た」「まる」 ページ13

「(名前の)過呼吸は死に直結するから」
坂田の言葉が重くのしかかる。そうだ。本当は踊り手なんて、危険な事をして欲しくない。それでも、「辞めて」とか言えないのは俺がAに甘い証拠なのだろう。
「そんな大変なんだ」
「そらるさんも心配だな。そらるさん何だかんだ言って家にあんまり居ないでしょう？いつもAちゃん一人で置いとくの？」
「うん、仕事さぼるわけにもいかないし」
「そうだよな」
「まあ、まふが大体引きこもっているからちょっと安心。同じマンションだし、鍵渡してあるから」
「それに、そらるさんとまふまふさんが出掛けて帰って来ない日は、私がお泊りに行きますから！」
「そうですよ！僕の妹は、今は高校生になりましたけど、一人で置いてくのは怖いですからね」
「そーいえば、ひきまるでハワイ行った時めっちゃ頻繁にラインしてんなーって思ってたわ。特に夜」
「そりゃ心配になりますよ。ハワイにいたら、なんかあっても直ぐには帰れないですから」
「あんときは本当に行こうかどうしようか迷ったよ。最終的に、96とろんが世話見てくれるって言ってくれたから行けたんだよな。本当感謝」
「呼んだ？」
「うるさい、ちび猫」
「黙れ、身長可愛い狸」
「二人共うるさい。A寝てんの。黙って。黙れないんだったら、外でやってきて」
「「ご、ごめん」」
96もとい、歌い手96猫がひょこっと顔出しいつも通りうらたと喧嘩する。いつもは止めないけど、今は静かにして欲しい。Aが寝ているのだから。
「そういえばAに、アイもいるんだ。ついにバラした感じ？」
「96猫は知ってたのか」
「知ってたよ。むしろ、踊り手進めたのわしやし。その前に、動画編集教えたし」
96は、なんかニヤニヤしながらそう言う。俺がシスコン気味なのを知っていて、その上で自分の方が頼られているとアピールしたいのだろう。
まあ、そんな事でイラついたりしないそらるさんなのだが。

だっだっだっ
遠くから、全力ダッシュをする音がきこえた。静かにして欲しいと思い、誰だ？と首をひねっていると、
ガチャ、バァンッ
乱暴にドアが開けられた。
入ってきた人は、


「すみませんでしたっ！！楽屋招待、終了の時間ですっ、ってあれ？」


スタッフさんだった。


「「「「「あっ、忘れてた。これ楽屋招待か」」」」」
「えっ！？そうなのっ？Aもアイも引き強すぎない？」

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