37.長期戦は大変です。 ページ38
元から覚悟していた長期戦。実際にこの戦いは長引いているし、まだまだ続きそうだ。……それこそ、私が相手に『火の鳥』というあだ名をつけるほどに。
火の鳥には水が効く。分かりやすいけど、それはうまく立ち回れたらの話。私の魔法の命中率は半分といったところ。今のところ、火力に1番貢献しているのは蒼太だ。男性陣の武器に冷却効果をつけながら、火の鳥にうまく矢を当てている。
気になるのは理紗とウィンドウ。なんだかさっきから表示が遅い。理紗の反応も遅れている。さっき言ってた何かを気にしているのかな。それでも健と蒼太にバフと回復をかけている。
私も何発か攻撃をくらって、何度か回復してもらった。痛みや疲れが引いて、動き回って減っていく酸素を補充してくれるような……本当に、『回復』としか言いきれないような、心地よい感覚。
私だって、あまりやってない妨害魔法を使ってみたりして、どうにかしようとしている。速度を落とす『重力』の使い勝手がいいけれど、クールタイムが長い。
はっきり言って苦戦している。そして、なんだか嫌な予感がする……
「うわっ!」
数分後、突然聞こえた声の方を見ると、蒼太が倒れていた。そこに追撃しようと火の鳥が動く。
「避けてっ!Acqua-Rosso-primo!」
水魔法を相手と蒼太の間を狙って放つ。火の鳥との距離が広がった。
「いったん下がれ!」
健が叫ぶ。何がきっかけで倒れたのかは分からないけど、今の蒼太の体力が低いのは分かる。下がるのはいい判断。とりあえず回復を……
「えっと、回復、」
「危ない!」
理紗が呪文を唱えようとすると、火の鳥がこっちに突っ込んできた。気を引こうとしていた健を無視して、蒼太を狙っている。本人は火の鳥に背を向けていた。
とっさに理紗を後ろに隠す。理由のひとつは、攻撃から守るため。大事な、唯一の回復役だから。
そして、もうひとつは。
「蒼太ッ!」
予想してしまった最悪の事態を、見せないため。
声にならないうめき声、らしきものをあげてその場に倒れる。傷はついていないし血も出ていない。私が見た限り、火の鳥に思い切り蹴られたのだろう。火の鳥は満足気に空中に戻る。
健が駆け寄った瞬間、それは起こってしまった。
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シュウ - 待っ…面白いです! (2021年9月3日 0時) (レス) id: f920010a89 (このIDを非表示/違反報告)
恋 - 読んでいて楽しいです!こんなおもしろい作品をつくってくれてありがとうございますっ!これからも応援してます! (2021年5月8日 20時) (レス) id: b0074abe1a (このIDを非表示/違反報告)
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