No.80〜さすがの私も〜 ページ44
◇
凜はAの髪を拭いている間されるがままで、ずいぶん大人しい彼女に疑問を持った。
「A…?」
『…凜、私も、さすがに恥ずかしい…』
タオルを取ると彼女は俯いて、蚊の鳴くような声で呟いた。
「え……ッ!!」
なんのことを言っているのか始め分からなかったが、自分たちをよく見ると、彼女が凜の足の間に座るような形になっていた。あまりの近い距離に凜は驚き飛びのくと、「すまない…」と謝り顔を赤くした。
『…。』
Aも耳まで真っ赤であり、頭から湯気でも出そうであった。
あの後、数分の沈黙があり、Aが『は、始める?』と言ったのをきっかけに本来の目的である練習が始まった。凜はさっそくフランスのトレーニングで何かを掴んだらしく、彼女はそれに合わせてシステムを調整した。
『(よかった…BLTVの時間外で。凜、知ったらビックリするだろうな…。)』
Aは凜の様子を見ながら、ぼーっと考える。そして、さっきまであんなに混乱していたのに、急に冷静に考える自分に苦笑した。
システムが終了したようで、凛はゆっくりとAが座っているベンチに向かって来る。彼女はそれに気づき、凛が座りやすいように少し右にずれた。
『はい、凛。持ってきてたタオル、私が使っちゃったから』
「あぁ、サンキュ」
凛は彼女からタオルを受け取ると首にかけ、汗を拭う。チラッと見た彼女の髪は乾いたようでいつものように真っ直ぐでサラサラとしていた。凛は下を向いて作業をしている彼女の髪を耳にかける。
「お前、結構ズボラだよな」
『え"…』
Aはバツの悪そうな顔をした。
「髪、乾かさねぇのかよ」
『いや、今日はたまたまと言うか…
「さっき、いつもって言ってたじゃねぇか」
『…。』
彼女はバレたっと言う表情で黙り込んだ。そしてボソッと『凛がいじめる…』と呟く。
「お前が風邪引いて、いなくなると困る」
凛は素直に心配だと言えない自分に内心呆れながら、誤魔化すように彼女の頭を優しく撫でた。
『…凛って頭撫でるの好き?ってか、私頭撫でられ過ぎじゃない!?みんな私のこと年下と思ってるとか!?』
Aはジトーッと凛を見た後、ハッとしたように言った。
彼女は何は閃いたようで凛の方を振り向いた後、彼の頭をポンポンと撫で、『ありがと!気をつけるね』とはにかんだ。
「〜〜〜ッ!!」
まさか自分がされると思っていなかった凛は、驚きのあまり動けなかった。
『(凛、髪サラサラだー)』
next…
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ひゅーまん - 私もこの作品大好きです、!投稿頑張って、です!♩ (1月6日 19時) (レス) @page4 id: 4488d94be9 (このIDを非表示/違反報告)
yU-Mi(プロフ) - アオウサギさん» ありがとうございます!更新頑張ります(感謝) (2023年4月14日 23時) (レス) @page3 id: b5df0d270f (このIDを非表示/違反報告)
アオウサギ(プロフ) - もう大好きです!!!更新頑張って下さい!!!!!! (2023年4月13日 22時) (レス) @page32 id: 42e17b849f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:yU-Mi | 作成日時:2023年3月14日 16時