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大「ん」
『え？』
大「上着、着とかな寒いで」
『ありがと』
渡された上着を着て、
わざわざ持ってきてくれたヘルメットを被った。
大「乗れた？」
『うん』
大「足ここ掛けや」
『わかった』
指示された通りにバイクに股がって、
大倉くんの腰に腕をきつく巻きつけた。
大「ちゃんと捕まっときや〜」
大きな音を立てて走り始め、
肌に当たる風は少し冷たかった。
『あ、ここ…』
他の音で私の声はかき消された。
ここは大倉くんと来てた図書館。
あの頃から大好きだったな〜なんて今でも思う。
大「さっきのとこ、前一緒に来てたな」
『同じこと思ってた笑』
大「お、相思相愛やな」
『ちょっと笑』
ふざけながらも、
私の足を摩って温めてくれる彼は本当に優しい。
大「まだ結構かかるけどいける？」
『うん、平気』
話し、走り、そう繰り返してると見えてくる水平線。
大「着いたっ」
『ありがと』
大「気い付けや」
私が降りやすくなるようにバイクを傾けてくれて、
2人でヘルメットを外して手を繋いだ。
大「海！」
『綺麗』
大「ほんまは今年の夏来たかってんけどな」
夏はなかなか予定が合わなくて、
家でご飯食べるくらいしかできなかった。
大「来年は勉強頑張ろうな」
『…はい』
補習さえなければ泳ぎに来れたのに。
大「また図書館行く？」
『うん、行きたい』
大「ええよ、行こ」
繋がれた手がぎゅっと握られて、
それと同時に、
あぁ来年も大倉くんの隣に居れるんだ、
と思うと嬉しくてたまらなかった。
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作者名：ゆりかご | 作成日時：2021年4月17日 23時
