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安田side


アリーナ席。


ステージからは遠いけど多分ここはAが通る。


まさか自分が観客側に座るなんてな笑


周りには絶対バレへんように不審者かってくらい変装しとる。


おかげで視線が刺さる。


「えっと…」

原「あの…」

「はい?」


女の人に声をかけられた。


原「安田さんですよね」

「そうです」


スタッフの札下げてるから平気やんな?


原「私、飯島のマネージャーの原田 夏帆と申します」

「あ、どうも。安田章大です」

原「その…飯島の方から話は聞いていて…」

「………僕、関係者席座らないので…内緒にしといてもらってもええですか?」


軽く帽子を上げて話す。


原「はい。わかりました。今日は…」

「あ、車です。近くの駐車場停めてます」

原「ライブ終わったら…」

「…」


正直、迷ってる。


原「…ライブ終わったら、裏口のところに車で待っててください。」

「…ありがとうございます」


それだけ言って、原田さんは戻ってしまった。


スタ「チケット拝見しまーす」


人混みの中を進んで、自分の席まで行く。


「ここって…」


俺とAが初めて会った場所やんか。


「粋な計らいやな…笑」


あの日、ピックを渡して全てが始まった。


「…がんばれ」


ステージに登場したAに言う。


曲が始まって、最初の方は昔の曲。


俺が「わたし鏡」を作るきっかけになった曲。


《っ………それでは、次の曲はここで歌いたいと思います。》


あぁ、関係者席見て残念な気持ちになったかな。


ごめんなぁ。


〜〜〜〜〜

『ゴンドラって楽しい?』

「んー。まぁ普通やで。」

『へー。乗ってみたいなー。』

〜〜〜〜〜


夢叶ったんやな。


《早過ぎたかも 僕ら夢物語

約束のウエディングロードはもう守ってやれない

口だけなのは 最後まで変われなくて

こんな自分じゃきっと誰も守っていけないよ》

「…(泣)」


このうた、ほんまあかんなあ。


《さよなら、最後まで愛していたんだ。嘘じゃない。

勝手だって怒るかな、本当馬鹿だったよ。ごめんな。

君の方はきっと新しい場所が出来たんだね

ごめんねとか要らないよ 君が言うなよ》


ごめんもありがとうも、たくさん伝えたい。


『パチッ』


目が合った。


ずっと伝えたかったこと。、


「(あ)(い)(た)(か)(っ)(た)」


すると、Aが手を伸ばして俺に向ける。


ポイッ


なにか投げられて焦って取ると、

俺の手の中には青いピックがあった。



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作者名:ゆりかご | 作成日時:2021年1月21日 21時

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