269 「母とクロロ」 ページ23
「うーん、どうかなー」
「産んだときは泣いてた」
「あれは……痛かったし」
クロロ君は苦笑した。子供のくせにその表情はずるいんじゃないか、と思う。
「スカーレットさん、素直じゃないよね」
「何とでも言ってください」
ほら、そうやって大人びたことを言い始める。この子は本当に9歳なのだろうか？そして私は本当に22歳の大人か？
むうと口を曲げていると、クロロ君の腕に大人しく抱かれ、うとうとしていた娘がぐずりだした。
「あ、ごはんだ」
「何故君がわかるのかな、母親より早く」
「なんとなく。ほら、早く」
前をはだけてやると、すぐに娘はミルクを飲み始める。
「……さぁ飲め飲め、娘よ……いっぱい飲んで早く大きくなってくれ」
「あはは」
大人よりも体温が高い赤ちゃんの、僅かに湿った小さな頭を撫でる。汗と、特有の柔らかい匂いを少しだけ感じた。
「……俺、そろそろ帰るね。仲間が待ってるし」
「うん、そか」
「スカーレットさんも早く戻って。今日はいいけど、空気が悪くなってきたし」
「本は？いらない？」
「また借りに来るからいいよ」
そう言って、クロロ君はゴミの山を滑り降りて駆け出す。駆け出して4、5歩で振り返って、
「……十分、愛情あると思うよ！」
「へ！？」
「じゃあね」
と言って姿を消した。私は思わず呆然としてしまって、クロロ君のいなくなった方向を見つめた。
我に返って娘を見ると、娘は私の胸に口を付けたままうとうとしている。
こくんっとしてから、はっとしたようにまた吸い始めて、またうとうと。
「……ふ、ふふっ、何してんの……？」
寝るか飲むかのどっちかにはできないのだろうか？
「ふふ、あははっ」
笑いながら、こんな風に自然に笑ったのは何年振りだろうと思った。胸のあたりがほわっと暖かくて。
げっぷをさせると、娘は今度こそ眠りに落ちた。
寝顔を見ていると、何故か泣きたいような嬉しさが胸に広がった。……ああ、これが、と思った。
「……シビュラ」
その時初めて、私は娘の名前を呼んだのだ。
まぁ世間一般の常識としてわかるとは思うが、子育ては大変なものだ。それも1人親なら断然。
流星街にいるから細かい家事は必要ないとはいえ、数時間おきにミルクをやったり、トイレをさせたり、金は無いと困るから仕事に行って、大きくなったら離乳食を作ったり、いたずらしたのを叱ったり、もうこれだけでも何が何だかわからない。疲れて泣きたくなる。
これは常識だ、そしてこういう人を手伝うのも常識だ。覚えておけ。
そんな日々を過ごしている間に、もう3年が経とうとしていた。
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レン(プロフ) - このシリーズ3周するくらいとんでもなく面白かったです!!!!!更新停止なのは悲しいけどいつまでも待ってます！ほんとにこの作品大好きです!!!!! (1月28日 21時) (
レス) @page34 id: d242f3e9c7 (このIDを非表示/違反報告)
アロン(プロフ) - ついにキメラアント編っ！更新停止になっちゃってるけど、また更新再開してくれると嬉しいです！ (2021年8月26日 13時) (レス) id: ed0e3e5242 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - このシリーズめっちゃくちゃ好きです！更新待ってます！！ (2021年2月1日 8時) (レス) id: f151b0ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
Kan - 更新楽しみにしてます(^_^)ﾉ (2020年9月19日 23時) (レス) id: 807bcc086e (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草 - フレンチトースト頬張るふぇいたん可愛すぎる！！！ (2020年6月5日 21時) (レス) id: a69079c5f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤原 黎明 | 作成日時：2019年8月7日 21時
